2012年4月6日(金)

歌はいかがですか 【二〇一二年 卯月】
[山上路夫 × 村井邦彦 × 日向大介 × 宇野亜喜良]








オフィス北野・森社長と “魔法の小箱”

 ギターという楽器の歴史に於いて、「電気化」したのと同じくらい衝撃的なイノベーションに「ファズ」があります。今日の音楽においては「古くさい」などと揶揄されることさえ少なくない時代の発明品ではありますが、それでもファズの魅力と奥深さにノックアウトされてしまった人は少なくありません。
 音楽を通して「どんなことをヤラカシてやろうか」と考える野心的ミュージシ

ャンは、みなファズの効用をアレコレとスタジオで試しました。ベンチャーズ、ビートルズ、ストーンズ、ジミヘン、ジミー・ペイジ、ジェフ・ベックといったギター・グレイツはもちろんのこと、ロック、ソウル、ジャズ、その垣根を越えて(ある人はトレンドとして、またある人はその可能性を探求する意味で)この小さな小箱の効用を研究・模索しました。
 そんな〝魔法の小箱〟に

魅せられた人物は、プロの演奏家だけではありません。むしろプロかアマかは一切関係なく、音の「あり方」というものを意識的に考える人であれば一度はたどる道とも言えます。電気的にオーバーロードした=歪んだ音が、何故人間の耳には心地よく聴こえるのか。科学的な答えはいまだ発見されていませんが、事実でもあります。音楽って、難しいですよね。
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 そんな〝魔法の小箱〟が縁となり、先日オフィス北野の森昌行社長にロング・インタビューを敢行しました。ビートたけしと長らく共に歩み、今では北野映画のプロデューサーとしてだけでなく「たけし」という希代の才能を具現化する、という役割も担った方と言えるかもしれません。同時に、熱狂的なロック・ファ

ンであり、ギターに対する愛着と求道心はビートたけしをも呆れさせるほどの森社長。当方とてプロのギタリストではありませんし、プロの楽器屋さんでもありません。単なるファンにしか過ぎませんが、そういう意味では森社長という方は(本業がなんであれ)ある意味「最強のファン」のひとりとも言える方なわけで、ギターやファズに関する愛情はハンパないです。その「ハンパない」愛情はもち

ろんですが、お伺いしたエピソードの数々は当方個人では知りうることもない、という含蓄に富んだものばかりでした。
 通常であれば、森社長に話を聞く機会があればみな別のことを聞くと思います。しかも実は当方個人も熱烈なたけしマニアでもあり(笑)他の話題で聞きたいネタが山積していたワケですが、それらを全部封印し、このインタビューではファズ・ギターのことだけを伺いました。とても万人向けの内容とは言えませんが、そのインタビューは当方の個人ブログにて全文を公開しています。
 一切のシガラミや利潤とは無縁に、ただ音楽を純粋に考え、ロックやギターのことをあれこれと深く考える森社長は「少年」そのものでした。
(大久達朗=デザイナー)
ファズ・ブログ「BUZZ THE FUZZ」http://thetonebender.blogspot.jp 森社長のインタビューはこちら



てりとりぃアーカイヴ(初出:月刊てりとりぃ#13 平成23年3月26日号)
アナログ天国

 桑田佳祐が復活した。嬉しい。彼の名前を聞くとある曲とそれを聴いたときの事を思い出す。
 小学校の高学年に音楽に興味を持つと猛然とレコードが欲しくなった。だがレコードはとてつもなく高額で買えない。洋楽のシングル盤が370円。LPは1800円もした。当時ラーメンはせいぜい70円。小遣いが月100円の筆者にレコードは難攻不落。そんなわけで大好きなビートルズのLPを買えたのは1970年、中学3年になっていた。すでに彼らは解散を表明していた。ラジオのおかげで彼らのヒット曲の大半は知っていたが、LPの曲となるとからきしだった。
 そんななかクラスの人気者、桑田君はビートルズのレコードはうちに全部あると豪語していた。実際は彼の姉さんのものだったらし

いが、うらやましくてしょうがなかった。彼とは野球部でもいっしょでたまに帰りに彼の家によりビートルズのレコードを聞かせてもらった。この時代レコードの貸し借りもした。それでもそのほとんどがシングル盤だった。
 桑田君とは深夜電話でレコード聴き比べセッションもやった。お互いのレコー

ドを交互にかけ聞くのだ。当時市内通話は無制限で一回7円。毛布にくるまって何時間も電話で音楽を聴き、とめどもなく話をした。
 今からちょうど40年前の71年1月、ジョージがソロ・デビュー曲「マイ・スウィート・ロード」を出した。アルバムは3枚組5000円という天文学的高さゆえシングル盤にターゲットを

定めた。発売日の夕方地元のレコード店「チヤマ」にかけこんだ。次の日の昼休み恐る恐る視聴覚教室担当の先生にレコードを皆で聴きたい旨いうと、あっさり開けてくれた。桑田君以下4〜5人でこの5分にならんとする大作を大音量で2回たて続けに聴いた。不覚にも涙がこぼれた。曲の素晴らしさもさることながら、こうして大音量で皆とレコードを聴いている事に感動していた。これは70年代型のフィル・スペクター・サウンドだ、などという御託を並べるすべを知る由もない。それでもこの希代の名曲、名演奏は高校受験を控えた中学3年生に無限大の勇気をくれたのだった。それ以来シングル盤を大音量で聴く事が筆者の大きなテーマとなった。
︵宮治淳一=音楽資料館ブランディン管理人︶




Monthly Territory 2nd Anniversary - Original Bookmark

「月刊てりとりぃ」創刊2周年記念 オリジナルしおり 配布中です


2010年春に創刊されたフリーペーパー「月刊てりとりぃ」も現在配布中の第25
号で3年目に突入。日頃のご愛顧に感謝する意味も込めて、創刊2周年記念とし
て「オリジナルしおり」を作成しました。本紙でもお馴染み、宇野亜喜良氏によ
るオリジナル・ロゴ・デザインをカラーであしらったデザインとなっています。

数量限定とはなりますが、ディスクユニオンJazzTOKYO、神保町店、新宿ジャ
ズ館、BIBLIOPHILICにて現在無料配布中。ご希望の方はおややめに。