今を去ること数ヶ月前、二月九日の手塚治虫の命日に「てりとりぃ」編集長の濱田さんと手塚家の菩提寺にお線香をあげに行った。午後五時位だったがすでに夜の帳が降りかけ、薄暗かったのを覚えている。その後、池袋に出て、手塚プロの森資料室長と会い、三人で会食をした。そこでの話である。 乾杯の後すぐのことだったと思うが、関西方面で手塚治虫の原稿が見つかったらしいという話が出た。アルコールもどんどん入って
楽しい食事会で三時間くらい雑談をしたはずだ。でも、私は「手塚治虫の未発表の原稿!」という言葉が頭の中でぐるぐる回って、それ以外にどんな話をしたかよく覚えていない。 翌日すぐ手を回し、話に出た関西で原稿を持っている方を探した。人を介して連絡が取れたのは三月半ば頃のこと。そしてその方と会えたのは、もう四月に入っていた。遠くの町まで出かけ原稿を借りて、帰りに同志社大学に立ち寄り、手塚研究をしている竹内オサ
ム先生に見てもらい、その原稿がどういうものか確認した。それでも一部不明なものがあったので、帰京して森室長に尋ねたところすぐそれも解決した。 そのうちの一点は、手塚治虫の代表作「鉄腕アトム」の扉原稿だ。しかもカラー原稿。六月末に出る「カラー版 鉄腕アトム 限定BOX」にこの原稿の複製原画を付録として付けることにした。詳しくいうと「アトム」連載の始まる前年に発表された「アトム大使」の未発表原稿だ。「カラー版 鉄腕アトム」BOX1にはこの「アトム大使」の話も収録されているのでそこに入ることになる。この原稿を、松本零士先生に見せたところ、カラー原稿が見つかるのは珍しい、と感想をいただいた。 他に「ジャングル大帝」「メトロポリス」「タイガ
ー博士の珍旅行」などの未使用原稿が見つかったが、これらは来年初頭に出す「創作ノートと初期作品集3」に入れて、少し先のことになるが手塚ファンに喜んでもらおうと考えている。このような原稿が出てくることは、手塚研究のために喜ばしいだけでなく、日本漫画の貴重な文化財の発見であってとても意義のあることと思う。 最後に因縁めいた話で恐縮だが、この発見は手塚治虫の命日が発端になっていて、手塚先生が天からプレゼントしてくれたのではないかと勝手に思っているのだ。今回、「鉄腕アトム 限定BOX」に収録するに際して、「てりとりぃ」の読者にそれらを紹介しよう。 (川村寛=小学館クリエイティブ・編集者) ・貴重原稿を特別公開!クリックで拡大します▼▼▼
●冒頭のカラー原画:「アトム大使」扉の未使用原稿 ●左上:「ジャングル大帝」未使用原稿 ●右上:「メトロポリス」未使用原稿 ●左下:「タイガー博士の珍旅行」未使用原稿 ●右下:「タイガー博士の珍旅行」単行本化の際に削除されたコマ
©手塚プロダクション
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TV AGE シリーズ最新作
大ヒットアルバム「のこいのこ大全」から6年。奇跡の続編がついに完成!
誰もが知ってるけど、誰もが知らない歌手、のこいのこ。彼女が歌った「エバラ焼肉のタレ」、「カップスター」、「オノデン坊や」など800にも及ぶというCM曲の中からよりすぐったベスト・アルバム『のこいのこ大全』(06年)は、アマゾン・ジャパンの予約チャートの1位を獲得。3万枚を売り上げた。この枚
数の凄さを、特に本誌関係者はしみじみ感じいるハズ。平成が誇る、企画モノの鑑(かがみ)だ。 6年経って、そこに収めきることが出来なかった曲を集めると、また、こんなに強力な盤となった。その名も『のこいのこ大全リターンズ』。 1曲目は誰あろう、のこいのこが、のこいのこ自身
を宣伝(?)する「のこいのこ新発売!」(伊藤アキラ作詞、桜井順作曲、多田三洋編曲)。 かつて遠藤賢司が「不滅の男」で〝がんばれよなんて言うんじゃないよ〟と歌ったことで、エンケンさんに「がんばってください」と言えなくなったように、この曲を聴いた後では、のこさんに向かって「キャンペーンはいかがですか?」とか「握手会やってください」とは、口が裂けても言えなくなるはず。 続いて、名曲『ひらけ!ポンキッキ』のOP曲「青い空白い雲」、ポンキッキ・ナンバー「もものハート」の新録バージョン2連発。編曲は五條弾が担当。 ここから怒涛のCM曲、テレビ主題曲が続く。その多くがはやし・こばの曲だ。どんな商品にも一瞬で生命力を与える、その歌声に改
めて感服する。「グリコ カプリソーネ・サウンド・ロゴ・メドレー」では、歌詞〝それはそうね、カプリソーネ〟をさまざまなメロディーで。実際に現場ではどんなディレクションがあったかはわからないが、ここで聴くと、まるで投げた球を打ち返すような反射神経の美技に溜息をつくこと必至です。 珍しいところでは、企画アルバム『チェブラーシカ 東京の休日』の中から、小西康陽が編曲を手がける「シャパクリャクの歌」。これまた珠玉の歌唱。同じく小西が作編曲を手がけた「BACKーUP!」、「爆笑おすピー問題!」の溢れんばかりの幸福感はどこか懐かしい。同じくピチカート・ファイヴつながり、というわけで、高浪慶太郎の作詞作曲による新曲「よそ見ばっかり」も素晴らし
い。〝血の通ったパスティーシュ〟とでも呼びたい、高浪節の全開だ。 これに続いて、布施明「そっとおやすみ」(詞曲はクニ河内)のカヴァーでのエンディングは、まるでテレビ局の放送終了時のBGMのよう。いい夢が見られそう。 本盤の発売記念として、CD購入者の中から抽選で1名に「のこいのこが、あなたのオリジナルCMソングを歌います!」企画が実施される。これは羨ましすぎる。もしも私に当たったら「プラッシー」のあっけらかんとした歌声で何度も名前を呼んでほしいです。 「パタパタママ」も新録で収録。自分がDJをやっているラジオ番組で、これとミリヤム・マケバ「パタパタ」を続けてかけよう、とたった今、思いついた。 (安田謙一=ロック漫筆)
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