[桜井順×古川タク]
犯罪ドラマの傑作、コレクターズ仕様でBlu-ray初登場!
今回、ジェネオン・ユニバーサルからブルーレイがリリースされる『スティング』は映画史を紐解けば必ず出てくる名作中の名作。とはいえ「名作!」と大上段に構えられると食指が湧かなくなる人も多いでしょうが、実は軽い気持ちで気軽に観れるエンターテインメントの傑作なのです。 『スティング』は73年に公開されたユニバーサル・ピクチャーズのハリウッド
映画で、アメリカン・ニューシネマの傑作『明日に向って撃て!』のジョージ・ロイ・ヒルが監督、同作に出演したポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの再共演で話題となり、大ヒットを記録。主人公のレッドフォードは若き詐欺師で、師匠を殺害したギャングに復讐するため、伝説的な賭博師(ニューマン)と共闘して、ギャングたちをイカサマで出し抜くまで
を描くコメディタッチの作品です。『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』や『マッチスティック・メン』『コンフィデンス』など詐欺師を主人公に詐欺の手口を鮮やかに見せる映画はかなりの数ありますが、いずれもミステリ映画の真相解明の瞬間に似て、「やられた!」と爽快な気分になるものです。主人公たちが相手を騙す面白さと、監督や役者たちによって我々観客が騙される快感がシンクロするのが「コン・ゲーム映画」の楽しさ。仕掛けが大きいほど騙された時の快感も大きいのですが、その意味でも『スティング』のラストは映画史上最高の天晴れな手口といえます。何より脚本の練られ具合が素晴らしい。主題歌の「ジ・エンターテイナー」も、軽快なラグタイム・ナンバーとしてあまりにも有名ですが、
| この楽曲にも象徴される、映画全体を包む「軽さ」が、今でも気軽に楽しめる一因といえましょう。 また、特典映像にはニューマンやレッドフォードのインタビューも収録されており、ここで語られる監督ジョージ・ロイ・ヒル像は非常に貴重な証言といえます。手堅く撮られているだけに、作家の個性が見えずらい人でもありますが、監督の作家性が物語への没入を邪魔しないので、その手堅さが作品を古びさせるこ ともなかったといえましょう。昔の映画が顧みられない理由の1つには、周囲が「名作!」と声高に語り過ぎて、未見の人たちが気軽に観ることを構えさせ躊躇させてしまうところが大きいのです。ですので、構えず軽い気持ちで観てほしいもの。何よりミステリ好きの日本人なら「上質な物語と見事なオチ」に鮮やかに騙される快感を知っているはずですから。 (馬飼野元宏=「映画秘宝」編集部) |
7月4日、ビーチ・ボーイズ関連盤が一挙6タイトル同時発売!
ビーチ・ボーイズ結成50周年というメモリアル・イヤーに、24年間ソロ活動を続けていたブライアン・ウィルソンがビーチ・ボーイズに戻り、27年ぶりに新作アルバムをリリース、日本を含むワールド・ツアーと、ファンにとってわくわくするニュースが次々舞い込んできた。この大きな「サーフズ・アップ」に合わせ、ソニーもビーチ・ボーイズ関連のCDを6枚リリースする。ブライアンなくしてビーチ・ボーイズは存在で
きないが、ビーチ・ボーイズ=ブライアンではない。 『スマイル』での挫折以降、ブライアンが急速にグループからリタイアしてしまったため、他のメンバーは自分たちで曲を書く必要性が生まれ、そのおかげで隠れていた才能が表に出てくることになる。メンバーはアルバム曲に留まらず、ソロ活動を行い、みなソロ・アルバムまで作るのだが、それがデニス・ウィルソンの『パシフィック・オーシャン・ブルー』(77年/未
発表で終わった『バンブー』とセット)とカール・ウィルソンのセカンド・ソロ『ヤングブラッド』(83年)である。重厚で壮大な世界観とサウンドを持つデニス、ファンキーなロックンロールを歌うカールのアルバムは、ビーチ・ボーイズの中では表現しきれないものだ。もうひとり、スタジオでの曲作りに専念するブライアンの代わりにツアー用に呼ばれたブルース・ジョンストンは、もっとも多くのソロ作品を作っていた。 ビーチ・ボーイズ加入前にサーフィン&ホットロッド(S&HR)シーンの中心人物のひとりだったブルースは、ソロ名義でも2枚アルバムを出していたが、その中でのベストが63年のセカンド・ソロ『サーフィン 世界をまわる』。その後、ブルースはビーチ・ボーイズに加入、70年代初頭
には、「ディズニー・ガールズ」などの名曲を書き、大きな期待を集めたものの、マネージャーと対立してグループを一時脱退、S&HR時代にブルース&テリーとして6枚のシングルをリリースした過去があるテリー・メルチャーと共にイクイノックスというレーベルを作り、カリフォルニア・ミュージックなどの素晴らしいレコードを作る。その時代にテリーが76年に発表したセカンド・ソロが『ロイヤル・フラッシュ』。ブルースはコーラスとプロデュースで参加していた。その中、ブルースはバニー・マニロウに書いた「歌の贈りもの」がグラミー賞最優秀楽曲賞を獲得、その栄誉を受けてこの曲やビーチ・ボーイズ時代の曲などを歌ったソロ・アルバム『歌の贈りもの』を77年にリリースする。ブルースらしい甘
い歌声、甘いメロディ全開の「甘―い」アルバムだ。 ここまでは過去に発売されたことがあるアルバムだが、『グッド・ヴァイブレーション〜ビーチ・ボーイズ・ソングブック』は初登場のカバー集。トッド・ラングレンの完コピ・カバーの「グッド・ヴァイブレーション」からスタート、ママ・キャスの「ディズニー・ガールズ」などブルース&テリーがらみが7曲、アンディ・ウィリアムスの「神のみぞ知る」、トーケンズの新旧カバー3曲、ブライアンもコーラスで参加したジョニー・リヴァースの「ヘルプ・ミー・ロンダ」など聴きどころは多いが、レア度ではペトゥラ・クラークのフランス語版「 ノー・ゴー・ショーボート」が目玉だ。 (佐野邦彦=VANDA編集人)
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