てりとりぃ放送局アーカイヴ(2012年12月14日〜2012年12月21日分)

 思えばこの「てりとりぃ放送局」ていうコーナーは、昨年この時期の「クリスマス・ソング特集」からスタートしました。んー、もう1年ですかぁ早いスね。さ、そんなことはともかく、今年もこの時期なのでクリスマス特集です。本来なら、今年の秋に亡くなったアンディー・ウィリアムスを追悼し「WHITE CHIRISTMAS」を載せるべきかもしれませんが、その役目は他の方に御任せして、日頃からバカっぽい雑文で本ブログの末席を汚す当方としてはやっぱりオバカなXマス・ソングをご紹介しようと思います。(2012年12月14日更新分/選・文=大久)


The Sonics / Santa Claus (1965)

 アメリカン・ガレージ・パンクの礎を築いたともいえそうな、カルト・ビート・バンド、ソニックスの大名曲。この曲は後にゼイ・マイト・ビー・ジャイアンツやベル&セバスチャンといったグループによってカヴァーされたことからも、人気の高さがうかがえる曲ですよね。ソニックスは65年にあの「JINGLE BELL」のノヴェルティー・カヴァー「THE VILLAGE IDEOT」や、「DON'T BELIEVE IN CHRISTMAS」なんて曲も残してます。よほどクリスマスに恨みでもあるのかなあ(笑)。
T-Rex / Christmas Bop (1972)

 人気絶頂のT-REXが72年、ファンクラブ用に録音した「CHRISTMAS BOP」。後に日本で6曲入りCDボックスとして89年に発売されたので、ご存知の方も多いと思います。そういえばあのボックス持ってたハズだなあ。なんかダサいデザインの(笑)Tシャツがついていたのですが、どこいっちゃったのかなあ。ちなみにそのボックスは、翌年にも再発売され、なんとミックス違いトラックを8曲以上追加収録したという、商魂逞しいボックスでした。
Wizzard / I Wish It Could Be Christmas Everyday (1973)

 ド変態グラム・ポップ・スター、ロイ・ウッド率いるウィザードの全英NO.1クリスマス・ソング。曲はもうフィル・スペクターの「音の壁」スタイルを丸々グラム・ロックで再現してみた、というイカした馬鹿ロック最高峰なわけですが、なんと言ってもこのビデオが最高です。年末だからといって無意味にシンミリしてしまう日本人は、もっとウィザードを聴いて勉強して欲しいですね。まあ、好きずきではありますが。
Daryl Hall & John Oates / Jingle Bell Rock (1983)

 R&Rのクリスマス、といえば最も有名なのがこの「JINGLE BELL ROCK」でしょう。オリジナルは57年、ボビー・ヘルムスというカントリー系シンガーがデッカに残した曲ですが、既に70以上のアーティストによってカヴァーされているスタンダード。近年ではブライアン・セッツァーによる豪快なロカビリー・カヴァーが有名ですが、こちらは83年にホール&オーツがシングル発売(アルバム未収録)したカヴァー。おバカなPVが最高ですね。
Captain Sensible / One Christmas Catalogue" (1984)

 ウィザード以外でも、オバカなクリスマス・ソングといえば、それはもう英国ロックの独壇場です。こちらはダムドのキャプテン・センシブルが84年に発売したダンス・ポップなXマス曲。メチャクチャ名曲です。さすがダムド一派は違いますね。そしてこのオバカなオヤジは今もダムドのステージで「NEW ROSE」「LOVE SONG」「NEAT NEAT NEAT」を超高速バージョンで演奏してる、というのも痛快です。
"Jingle Bell Rock" on "Mean Girls" (2004)

 「JINGLE BELL ROCK」をもうひとつご紹介。04年公開の米映画『MEAN GIRLS』の中のワンシーン。カワイ娘チャンのドタバタ学園コメディーなワケですが、こういうのを見ると、いやーアメリカってのはどこまでも大雑把で保守的で、でもそれもなかなか素敵じゃん?とか素直に思えてしまうわけです。セクシー女子高生が4人も揃えばそりゃ無敵ですよね。
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 クリスマス特集の続編です。やはり、パーティー・シーズンとは言っても、毎日乱痴気騒ぎでは胃袋も体力も消耗しますし。年の瀬はシンミリ考え事するのにもいい時期ですもんね。そんなワケで前回よりは、もう少しマジメな(笑)カンジの曲を集めてみました。アコースティックでスピリチュアルな、シンミリ系のクリスマス・ソング特集です。(2012年12月21日更新分/選・文=大久)


Rotary Connection / Silent Night (1968)

 ロータリー・コネクションのクリスマス・アルバム『PEACE』は、実は彼らにとって最もヒット(米24位)した作品でした。が、最も音楽的評価の低い作品でもあります。というのも、後にレア・グルーヴ・クラシックとなったNEW ROTARY CONNECTIONの作品や、グループから独立し別次元の成功を収めたミニー・リパートンの作品群に評価が集中してしまうから、と考えられます。それはともかく、やはりチャールズ・ステップニーの煌めくアレンジも冴えるサイケデリック・エイジの「SILENT NIGHT」は最高です。
Greg Lake / I Believe in Father Christmas (1975)

 後に純粋なクリスマス・アルバム(88年)を発表したキース・エマーソンですが、その発端はこの曲だったのでしょうか? こちらはグレッグ・レイクのソロ名義での75年作品ですが、エマーソン&パーマーも参加して録音された曲。後にはELP名義で77年に再録音されてもいます。作詞はピート・シンフィールド。曲中にプロコフィエフの「キージェ中尉」のフレーズを引用したこの曲は、後にスウィングル・シンガーズ(94年)やU2(08年)もカヴァーしています。
Mike Oldfield / In Dulci Jubilo (1975)

 今年のロンドン五輪でも名曲「TUBULAR BELLS」を披露して喝采を浴びたマイク・オールドフィールドさん。ひとり多重録音を得意とする彼ですから、こちらの曲のPVも納得の内容です。…けど、これ見るといつも「MIDIてのは友達のいない寂しいヤツのためにあるモンだ」という歴史的名言(BY アル・クーパー)を思い出しちゃうんですよね。もちろんMIDIのない時代の曲ですけど、カタブツで知られるマイク・オールドフィールド、やっぱ友達いないのかなあ、なんて(笑)。
Robert Fripp / Silent Night (1979)

 ロバート・フリップ先生が開発した「フリッパートロニクス」というギター・システムをを駆使して即興演奏された「サイレント・ナイト」。この音源は79年に、アメリカの「PRAXIS MAGAZIN」という雑誌に添付されたソノシートに収録された音源で、後の1995年にクリムゾンのコンピレーション盤にてCD化されました。 フリッパートロニクスはまさに「元祖・友達がいない人のためのシステム」ですよね(笑)。
まねきねこダック クリスマス篇(2009)

 おまけ動画。まだご記憶にも新しいかと思いますが、今から3年前のAFLACのTVCM、クリスマス編です。歌っているのは「たつやくんとマユミーヌ」で、後者はAFLAC「アヒルのワルツ」他多数のCM曲で知られるプロの歌手、そして前者は(どうでもいいことですが)元AKB48の増山加弥乃の実弟、なんだそうです。そんなことよりもこのエレピの響きとコードワーク。そして歌詞。うーん、心からシンミリしますね。あ、イカンイカン、またウィザードを聴いて心を入れ替えなければ。
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 2011年末、ディス・モータル・コイル(以下TMC)のボックスが発売になりました。が、残念ながらメディアで取り上げられることは殆どありませんでした。24ビットHDCDで、ジャケもワザワザ日本の一九堂印刷で最高級の紙ジャケを制作、という採算度外視の「アート」の箱。知らない人が見れば、ただのブキミな真っ黒い箱でしかありませんが。今回はたったアルバム3枚で伝説になった偉大なユニットTMCの特集。過去に彼らが取り上げたカヴァー曲を集めてみました。耽美、ですね。(2012年12月21日更新分/選・文=大久)


This Mortal Coil / Another Day (1984)

 ブリティッシュ・フォークの雄、ロイ・ハーパーの70年作のカヴァー。この曲はピーター・ガブリエルやケイト・ブッシュもカヴァーしていますね。ちなみにTMCはあの4ADレーベルの社長(とはいえ当時まだ30歳の)アイヴォ・ワッツ・ラッセル自身によるスペシャル・プロジェクトで、メンバーは決まっていません。とにかく「社長の好きなことをやる」という豪快なプロジェクトでした。スゲエ。

This Mortal Coil / Song to the Siren (1984)

 ティム・バックリー、1970年作のカヴァー。ヴォーカルを取るのは同じ4ADの人気バンド、コクトー・ツインズのエリザベス・フレイザー。あのデヴィッド・リンチ監督が映画『ブルー・ベルベット』のためにどうしてもこの曲を使用したい!と懇願するもあっけなく拒否され、代わりに新規制作されたジュリー・クルーズの曲がヒットした、なんてことも知られています。

This Mortal Coil / My Father(1986)

 英インディー・チャートでNO.1、半年以上チャートインしたという記録を作ったファーストから2年後に発売されたセカンドから。ジュディー・コリンズ68年発表曲のカヴァー。ヴォーカルを担当しているのは、後に「MAKE IT ON MY OWN」のクラブ・ヒットでUKソウルの人気シンガーとなったアリソン・リメリック。彼女がスタイル・カウンシル『OUR FAVOURITE SHOP』への参加の後にやった仕事がこの作品への参加、でした。

This Mortal Coil / Late Night (1991)

 3作目、TMC最後の作品で、最高傑作(で間違いないと思います)となった91年の『BLOOD』より、シド・バレット69年作のカヴァーです。このPVにも映っている女性がこの曲のヴォーカルですが、彼女は80年代〜90年代にラフ・トレードで活動した耽美系グループ、シェリアン・オーファンのヴォーカリスト、キャロライン・クロウリー。この名作を最後に、TMCは幕を閉じることになりました。

The Hope Blister / Spider And I (1998)

 が、なんと98年、社長のワガママふたたび。同じ主旨で今度はTHE HOPE BLASTERという新ユニットで、作品が発表されました。こちらはその『…SMILES, OK』収録の、ブライアン・イーノの77年作のカヴァー。同アルバムは全曲カヴァーで、他にもデヴィッド・シルヴィアン、ジョン・ケイル等の「イカニモ」なカヴァーを収録。しかしアイヴォ・ワッツ・ラッセルは翌99年に4ADの一切の権利を譲渡し、その後アート/写真に関する出版事業へと転身しています。

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