2013年1月4日(金)【新年特大号】

速報!ロジャー・ニコルス&SCOF、新作のアナログ盤が発売決定!

 2012年の晩秋に発売され、現在もポップス・ファンの間でその話題が尽きることのない、ロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズのサード・アルバム『マイ・ハート・イズ・ホーム』。3人が織りなすハーモニーが60年代から一切変わる事無く、今も健在で、そして

今もリスナーを魅了することを見事に表現し、さらにソングライティングの面でもエターナルなポップスの魔術に満ちあふれたこの作品が、2013年の初冬になんとアナログ盤で発売されることが決定。ディスクユニオンが運営するシンク!レーベルからの発売で、このアナログ盤にのみ限定

7インチ盤が添付されるとのこと(7インチ盤収録曲は、同作中もっともジャズのスタイルに歩み寄った「ムーン・イズ・レッド」と「フィールズ・グッド・トゥ・ビー・バッド・アゲイン」となる予定)。
 実は07年に発売された彼らのセカンド・アルバム『フル・サークル』も、初回限定生産として極少数のアナログ盤が当時発売されたが、その際には速攻で品切れ/販売終了となり、その存在すら知らないファンも多かった模様。LP特有の大きなジャケット、針を落とす、という文字通りアナログな感覚を愛でる音楽ファンは、是非今回の『マイ・ハート・イズ・ホーム』の限定アナログ盤の発売をお見逃し無く。商品の発売日や詳細に関しては、シンク!レーベルの公式HPにて。(文=編集部)
●ディスクユニオン/シンク!レーベルによる商品詳細情報はこちらからどうぞ



ネットで読めるドラマ脚本〜「市川森一の世界」公開中

 2011年に七〇歳で亡くなった脚本家の市川森一。その業績をまとめたWEBサイト「市川森一の世界」が公開された。筆者もスタッフとして制作にたずさわったので、この場を借りて、詳しくご紹介したい。
 もしかしたら、市川森一の名前をご存じない方は多いかも知れない。だが、氏が脚本を書いたテレビドラマを観たことがある人は、きっと多いはずである。生涯を通じて手がけたテレビ作品は190あまり。なか

でも特撮ヒーローものの『ウルトラセブン』『帰ってきたウルトラマン』『ウルトラマンA』、刑事ドラマの金字塔『太陽にほえろ!』は、再放送やDVD発売がくり返され、今も新たなファンを生み出している。また、若き日の萩原健一と水谷豊が競演した『傷だらけの天使』は、のちに映画でリメイクされるなど、「青春ドラマ」の決定版として、いまだに評価が高い。
 さて今回公開されたサイトだが、その最大の特色は、

市川が生前に手がけたテレビドラマの脚本が、無料で、しかも150本も読めることである。一般にはなじみがないドラマ脚本。だが、市川が書いたそれは登場人物の会話に深みがあり、しかも読みやすい。さらに、ストーリーにはファンタジーの要素があるものも多く、読み進めるほどに想像力をかき立てる。また、いわゆる「ハッピーエンド」が少ないのも市川ドラマの特徴。せつなさの中でかすかに希望が光る結末は、心に響くものがあるだずだ。加えて、セリフなどから昭和の文化や風俗が感じられるのも、若い人には新鮮だろう。
 市川森一は1941年に長崎県で生まれた。日大を卒業後、二五歳のときにドラマ『快獣ブースカ』で脚本家デビューし、以後、子ども向けのドラマを量産。三〇代に入ると活動の場を

大人向けドラマへ移し、NHKの大河ドラマを3度も担当するなど活躍した。
 その晩年には日本放送作家協会の理事をつとめ、さらに「日本脚本アーカイブズ」を設立。散逸する一方のテレビやラジオの放送台本の収集を精力的に行ない、集めた台本5万冊あまりをデータベース化した。海外では放送台本の収集整理、一般公開が進んでいるが、わが国では、この「日本脚本〜」が初の試みである。
 日本の大手テレビ局が、自社で作った番組の映像保存を積極的に始めたのは、1970年代のおわり。それ以前の番組は、映像が残されていないものが多く、その内容を知る手がかりは「番組の設計図」である台本しかない。公開中の「市川森一の世界」は、故人の業績を振り返るためのものだけでなく、放送台本の文

化的な価値と、それを集め、整理保存し、後世に伝えることの大切さを、世間に広く訴える目的もあるのだ。
 現在、都内のNHK放送博物館では、「市川森一が遺したもの」と題された展示会を開催中。また横浜市にある放送ライブラリーでは「市川森一・夢の軌跡」が催され、氏が手がけたテレビドラマの数々が視聴できる(いずれも入場料は無料)。先のサイトと合わせて、テレビ史にその名を深く刻んだ名脚本家の魅力に、ぜひ触れていただきたい。
(加藤義彦=売文家)
▲WEBサイト「デジタル脚本カーカイブズ 市川森一の世界」公開中! 内容は、1)脚本を読む、2)市川森一の足跡、3)関係者インタビューの3部構成で、(1)では、市川氏が書いたテレビドラマの脚本150本の全文が無料で読める。アドレスは http://nkac-ichikawa.jp で、2013年3月までの期間限定公開。



ねこばなし「足袋猫の魅力」

 しろくて、まるくて、やわらかいもの(以下、白ふわ)…例えば、つきたてのおもち、おまんじゅう、マシュマロ、白玉などは美味しそうに見えるうえ、ムニムニ触りたくなりますよね。つい触って固かったりすると理由無くがっかりしたり。こんなに白ふわが好きなのはなぜかしらと改めて考えてみたのですが、もしかして元をたどるとお母さんのおっぱいかもしれないという安易な結論に達しました。

気持ちよく美味しいという甘美さの根源です。ということは多くの人が潜在的に白ふわ好きなのではないかとも思います。
 話は変わって、私と猫との出会いの話になります。通っていた小学校の裏門に、ある日野良の足袋猫が現れました。足袋猫というのは、足袋を履いたように足の先だけ白い猫のことです。その多くはお腹も白く、顔の下の方も八割れに白かったりします。その小学校に住

み着くことになった足袋猫はちょうどきれいに白いおまんじゅうが先っちょにくっついているような手足だったので、第一印象は「美味しそう」でした。ついつい触ってムニムニしまくってしまったのですが期待を裏切らずやわらかく、元々飼い猫だったのか、されるがままで毎日遊ぶようになり、猫を本格的に好きになっていったことを覚えています。猫パンチも雪合戦みたいでかわいかったです。一緒に遊んでいた友達と「なぜ手足が白いとこんなにかわいいのか?」「一番汚れそうな部分なのに、なぜ手足の先が白いのか?」などを話し合ったりもしました(結論出ず)。
 他の動物、例えば犬や馬でもこの足袋柄がいて、足袋柄だというだけで何倍もかわいく見えることに気づき、うさぎに関してはかな

りかわいかったりもしたので、当時は猫好きというか足袋猫好きだったといえます。その後、足袋柄が一番似合うのは猫ということが肝となり猫好きが加速するのですが…
 よくよく見てみると、現実での足袋柄の割合というのはそんなに多くなく、出会うと心躍るくらい珍しいのに対し、架空の世界には足袋柄キャラクターが多く、ドラえもんやトムとジェリーのトムは足袋猫、のらくろは足袋犬です。その刷り込みのせいで私たちは無意識に足袋柄が好きになってしまうとも言えますが、原作者の方々は元々その刷り

込みが少ないと思うので、足袋柄が純粋にかわいいと思ってキャラクターにしているのではないでしょうか? 手塚治虫先生の作品でもたびたび猫が登場しますが、私のお気に入りは「三つ目がとおる」での和登サンの心がはいってしまった足袋猫です。和登さんの性格も相まってかわいさが炸裂しています! そんな作品に出会った時には、足袋猫のかわいさを実感、再確認し、そこにはひょっとすると、白ふわへの気持ちも込められているのかなと妄想してしまいます。
(長井雅子=デザイナー)

写真&イラストレーション:長井雅子 




ロック重箱の隅 第2回「愛こそはすべて」


THE BEATLES「ALL YOU NEED IS LOVE」(1967)
●世界初の衛星生中継番組として1967年6月25日に放送された「OUR WORLD」。オペラ歌手のマリア・カラス、画家パブロ・ピカソ等のパフォーマンスを放送した2時間半のこの番組は、19カ国で中継され400万人が視聴。番組のラストは、ビートルズの「愛こそはすべて」の生演奏で、ビートルズの周辺にはストーンズ、エリック・クラプトン、マリアンヌ・フェイスフル、キース・ムーン、グラハム・ナッシュ等の姿が。

 リバプールというド田舎に育った4人のチンピラがビートルズとしてデビューしてから世界を制するまで、たかだか3年くらい。デビューから解散まで入れてもたったの8年。この間、ビートルズを取り巻く周囲の環境の激変は相当なものだったはず。特に、ビートル

ズに近いスタッフほどその環境の激変に振り回されたと思う。最初はマネージャーのブライアン・エプスタインの指示に従っていたビートルズも、ツアーをやめてからは以前のようにエプスタインの必要を感じなくなる。エプスタイン自身もツアーが無い為に自身の出

る幕が無くなり、だんだん自分の居場所が無くなっていくのを感じていった。なにせ、名プロデューサーのジョージ・マーティンでさえ、最初は先生のような役目だったのが、「だんだんビートルズとの主従関係が逆転していった」と、自著『耳こそはすべて』(写真右下)に書いているほどだ。ジョージ・マーティンですらそうだったのだから、ツアーのセッティングという仕事もなく、レコーディングの現場には口を挟めないエプスタインの疎外感はどれほどだったろうか。
 そんな中で久々エプスタインが取って来た大きな仕事。それが、世界初の全世界衛星中継「アワ・ワールド」でのビートルズの生中継だった。この歴史的番組に、イギリスを代表してビートルズが出演する。優秀なマネージャー、エプスタ

インの手柄と言っていい。久々に自分の存在感をビートルズにアピールする場だ。久し振りにレコーディングスタジオに現れたエプスタインは、咳払いして一呼吸置き、「今日はみんなに素晴らしい報せを持ってきた。衛星を使った史上初の世界同時生中継の番組に、イギリスを代表して出演することになった。そこで新曲のレコーディングを全世界に放送するんだ!」。誇らしげな表情のエプスタイン。文句無しの久々のホームラン! だが、これを聞いたビートルズのリアクションはというと…。エプスタインの話の為に中断したチェスを再開したいリンゴ、ギ

ターのチューングをするジョージ、ぽかんと顔を見合わせるジョンとポール。そして、明らかに気乗りしないジョンの返事「わかった。ちょっと考えてみるよ」。メンバーからのこの反応にエプスタインは激怒する。「どういうことだ! これがどういう意味を持つのかわかってるのか! 私がこの話を決めるのにどれだけ苦労してきたと思う!」。これに対するジョンの返事がすごい。「しょうがないだろブライアン、先にオレたちに訊きにこないからこうなるんだよ」。ヒエ~~。何この愛の無さ!(笑) この辺のくだりは、エンジニアだったジェフ・エメリ

ックの名著『ビートルズサウンド最後の真実』(写真左上は09年発行の新装版)に仔細に書かれているので興味ある方は是非読んで欲しい。この対応に、「エプスタインは今にも泣きそうな顔で言葉も言わずにその場を立ち去った」と書いてある。ちょっと、どうよ?このシチュエーション(笑)。自分の存在感が薄れてきたと感じたマネージャーが、一発逆転を狙って大きな仕事を決めてサプライズ発表したというのに、この反応。さらに凄いのは、この件がその後しばらくほったらかしにされ、スタッフから放送まであと二週間だと言われた時のジョンの返事。「まいったな、そんなにすぐなのか。じゃあ何か書いてきた方がよさそうだな」そして、番組のテーマに合わせて文字通り数日でジョンが書き上げて来た曲が、

あの「愛こそはすべて」なんだわ。
 一連のこの、愛のかけらも感じられない現場で産み出されたのがあの名曲って(笑)。生中継の現場で「愛こそはすべて」と歌うジョンを見てエプスタインはいったいどう思ってたんだろうね。エプスタインはゲイで、ジョンが好きだったんだから尚更だと思う。制作エピソードを知るほど「おまえら、愛こそはすべて、じゃねーだろ!」というツッコミを入れたくなるが、この辺のデタラメさがビートルズの魅力なんだよねー。前述したジェフ・エメリックの本は後期ビートルズ、特に録音現場でのジョンがいかにひどい人間か詳しく書かれているので是非一読をお勧めします。はっきり言って人間のクズです(笑)。
(五條 弾=会社員)



パイド・パイパー・デイズ 紙ジャケット・シリーズが発売!

 先頃、『パイド・パイパー・デイズ』シリーズ(監修・長門芳郎)が久しぶりに発売となりました。2003年12月にスタートした今シリーズは音楽評論や国内外アーティストのプロデュースを手掛けているビリーヴ・イン・マジックの長門芳郎氏がかつて店長を務めていた南青山のレコ-ド・ショップ「パイド・パイ

パー・ハウス」に由来するものです。小説にも度々登場したこともあり、また、多くのミュージシャンも足繁く通った音楽発信の場所でした。そこには音楽が夢見れる「時間と空間」がありました。
 そんな「パイド・パイパー・ハウス」が発信していた幸福な音楽をCDという形で紹介していくのが本シ

リーズです。では、ここでそれぞれの作品を簡単に紹介していきましょう。
 デイヴィ・ジョーンズ『デイヴィ・ジョーンズ』は世界的なスーパー・アイドルとなったモンキーズのメンバーの中で絶大なる人気を博したデイヴィが71年発表したセカンド・ソロ・アルバム。ファンにとっては待望の日本初CD化。残念ながら彼は今年2月に66歳の若さで亡くなりました。
 デヴィッド・キャシディ『キャシディ・ライヴ!』は人気全盛期の74年に発表されたライヴ・アルバム。自身のヒット曲の他にビートルズの「プリーズ・プリーズ・ミー」などのカヴァーを収録。こちらも日本初CD化。当時の日本盤LPジャケットを再現し、ポスターも復刻しています。
 69年発表のザ・マッチ『ニュー・ライト』はロジ

ャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズの名演で知られる「ドント・テイク・ユア・タイム」やロジャー・ニコルス&ポール・ウィリアムス作の「モーニン・アイル・ビー・ムーヴィン・オン」のカヴァー等を収録。ソフト・ロック・ファンからの人気が高く、長くCD化が待ち望まれていたハーモニー・ポップの名盤が遂に世界初CD化となりました。
 『トゥギャザー?』は79年公開のイタリア映画のオリジナル・サウンドトラック盤。作曲・編曲・指揮をバート・バカラック、作詞をポール・アンカ、リビー・タイタスが担当。マイケル・マクドナルド、ジャッキー・デシャノンらのヴォーカルをフィーチャーしたAORの名盤としても人気が高い作品です。バカラック関連のサントラ・アルバ

ムで唯一CD化されていない貴重な作品が遂に世界初CD化となりました。
 そしてアリー・ウィリス『チャイルドスター』はアース・ウインド&ファイアーの「セプテンバー」「ブギー・ワンダーランド」、リタ・クーリッジの「ラヴ・ミー・アゲイン」ほか、数多くのヒット曲を書いた人気女性ソングライター、アリー・ウィリスが74年に残した唯一したソロ・アルバム。名匠ジェリー・ラガヴォイ・プロデュースのもと、スティーヴ・ガッド、デヴィッド・スピノザ、トニー・レヴィンらNYの精鋭ミュージシャンが参加。ポップス・ファン必聴の一枚。こちらも世界初CD化です。いずれも寒い冬に心が温かくなる作品ばかり。お聴き逃しなく!
(関口茂=音楽カタログ探求者)
●パイド・パイパー・デイズ 紙ジャケット・シリーズ

左から:デイビー・ジョーンズ『デイビー・ジョーンズ』、デビッド・キャシディ『ライヴ!』、ザ・マッチ『ニュー・ライト』、OST『トゥギャザー』、アリー・ウィリス『チャイルドスター』
ソニーBMGより2012年12月26日発売 [完全限定生産盤]監修:長門芳郎 全タイトル:税込¥2,205/紙ジャケット仕様 最新DSDマスタリング/高品質CD : Blu-Spec CD 2採用