てりとりぃ放送曲アーカイヴ(2013年1月4日〜2013年1月18日)

 2012年12月11日、伝説的な、というよりも、ほぼひとりでそのジャンル全てを担っていた偉大なシタール奏者、ラヴィ・シャンカールが亡くなりました。92歳でした。日本のニュース番組でもかなり大きくその訃報が扱われましたが、ほぼ「ビートルズの〜」とか「ノラ・ジョーンズの〜」といった枕詞で紹介されていた彼。そこに文句を言うつもりはありませんが、折角の機会なので、彼の関連動画を集めてみました。(2013年1月4日更新分/選・文=大久)


Ravi Shankar / Alice in Wonderland (1966)

 それまでダンサー(!)として世界各国で舞台を踏んでいたラヴィ・シャンカールですが、50年代の後半頃、40歳を過ぎてから本格的なシタールの奏者になったそうです。彼の名を一躍有名にしたのは66年、あのモンタレー・ポップ・フェスティヴァルへの出演ですが、こちらは同年、イギリスBBCが制作した、テレビ版「不思議の国のアリス」のサウンドトラックより。同番組は数ある「アリス〜」の映像作品の中でも、最も「ゴスロリ」でサイケなバージョン、としてしられています。

Ravi Shankar / Charly (1968)

 こちらもサウンドトラック作品。68年の米映画「CHARLY」のサントラより。というか、原題を表記してもあまり馴染みがないかもしれません。原作小説はダニエル・キイスの「アルジャーノンに花束を」、そして映画化された際に「まごころを君に」という邦題がつけられた映画です。10年程前にユースケ・サンタマリア&菅野美穂でドラマ化されたこともありますが、やっぱり近年でいえば「エヴァ」ファンに馴染みのある作品かも。


Ravi Shankar & George Harrison - Sitar Lesson (1968)

 既に一般常識的な話ですが、ビートルズにシタールとインド音楽を伝授したのはラヴィ・シャンカールでした。動画は68年、ジョージ・ハリスンにシタール奏法を伝授するシャンカール先生、という場面。シャンカール先生の提案で、ジョージが音頭を取り「バングラデシュ救済コンサート」が催された、ということも既に有名ですね。ちなみに、現在ジョージ・ハリソンの公式HPのトップには、ラヴィ・シャンカールの写真がデカデカと掲載されてもいます。

Ananda Shankar / Jumpin Jack Flash (1970)

 さて、こちらはラヴィではなく、彼の甥っコにあたるシタール奏者、アナンダ・シャンカールのヒット曲。偉大なるオジ様にあやかった、というワケではないんでしょうが、より欧米のポップスに傾倒した「シタール・ポップス」を披露した奏者として知られており、イギリスのレア・グルーヴ・ブーム以降はとくに再評価の高い人でもあります。曲はもちろんストーンズのカヴァー。アナンダ・シャンカールはオジさんより先に、99年に逝去しています。


Anoushka Shankar & Norah Jones / Easy (2007)

 最後も「ファミリーもの」です。ご承知のように、グラミーを受賞したジャズ・シンガー、ノラ・ジョーンズは、ラヴィ・シャンカールが60を過ぎてから生んだ愛娘ですが、彼女の2歳下になる妹さん、アヌーシュカ・シャンカールは父と同じくシタール奏者として現在も活躍しています(ちなみにこの姉妹は、異母姉妹です)。こちらはその2人の姉妹が共演した07年発表曲で、妹アヌーシュカのリーダー作『BREATHING UNDER WATER』収録曲。

*動画のリンク切れの場合はご容赦ください。



 エイドリアン・ブリュー。もちろん世界的に有名なスーパーギタリストのひとりです。バカテクの実力派なのは間違いありませんが、彼の魅力/特徴は何か、といわれれば「奇妙キテレツでおバカで微笑ましい」てなカンジになるかと思います。スーパースターなのに、そんな形容されてしまうところがまた微笑ましいわけですが、今回はそんなエイドリアン・ブリューのキャリアをおさらいしてみました。(2013年1月11日更新分/選・文=大久)

Frank Zappa / Flakes (1978)

 ブリューは77年、フランク・ザッパに見いだされてザッパ・バンドに加入し、本格的なプロ・キャリアをスタートさせています。そこで早速録音されたのがこの「FLAKES」なのですが、ブリューはリズム・ギターとヴォーカルで参加しています。しかもそのヴォーカルというのは、曲の中程に出てくる「ボブ・ディランの物まね」ヴォーカル、でした。もちろんザッパ師匠はブリューの「物まねの上手さ」に惚れて引き抜いたワケではないと思うのですが(笑)そんなエピソードもブリューらしいですね。

King Crimson / Elephant Talk (1981)

 78年にはデヴィッド・ボウイのバンドに参加、その後80年にトーキング・ヘッズにギタリストとして参加。この時点で世界的に有名なギタリストになりましたが、更に世界を驚愕させたのが、81年の再結成キング・クリムゾンへの参加でした。このTVライヴを見ても、縦横無尽に好き勝手やり放題のブリューさんは最高です。しかもあの「ロック界最高のカタブツ」フリップ先生が彼を見てニコニコしてしまう、というあたりも、ブリューがクリムゾンにもたらした最大の影響かもしれませんね。

Jean Michel Jarre / Zoolookologie (1984)

 ゲスト参加もやたらと多いブリューさんですが、こちらは84年、ジャン・ミッシェル・ジャールのエレクトロ・ヒップホップ作品『ZOOLOOK』収録曲。同作はローリー・アンダーソン(VO)、ブリュー(G)、マーカス・ミラー(B)等の演奏を一度全部サンプラーにブッ込んで、ジャン・ミッシェル・ジャールがギッタギタにぶった切る、という手法で制作されたアルバムでした。もはやどこがブリューのギターなのかワカンネエ、ってあたりも、ブリューらしいのかも(笑)。

Adrian Belew -Daikin TVCM (1990)

 90年、日本で一気にエイドリアン・ブリューの知名度を上げたのが、このダイキン(エアコンの大手メーカー)のTVCMでした。全部で3つのCMが制作されましたが、やってることは全部一緒で、「ギターでヘンテコな音を出しまくる」という一貫した脚本/演出でした。当時、デヴィッド・ボウイのバンドに再加入し、来日も果たした彼ですが、「夜のヒットスタジオ』で司会者から(ボウイそっちのけで)延々とこのネタをリクエストされていたことも思い出されます。

Adrian Belew and David Bowie / Pretty Pink Rose (1990)

 そんなボウイとの再開が縁となって、90年発表のソロ名義での5作目『YOUNG LIONS』ではボウイとのデュエット曲も収録、シングル発売もされています。既に上のいくつかの動画でも確認できるように、基本的にポップでお馬鹿なプレイが大好き、というブリューさん。どんなにお馬鹿をやっても「二枚目」を崩さないボウイとは対照的に、チョンマゲを揺らしてピコピコとジャンプするこのド変態ギタリスト、やはり愛さずにはいられません。

*動画のリンク切れの場合はご容赦ください。



 1920年に作曲され、翌年作曲者のアル・ジョルソンの歌唱によってチャート2位の大ヒットを記録、以降は数多のシンガー/ミュージシャンに取り上げられたことで、現在にいたるまで「超」の付くようなスタンダード曲としてしられる「AVALON」。今回はその「AVALON」の聴き比べなんですが、アレンジ、特にビッグバンド・アレンジに着目して選んでみました。それにしてももうすぐ100年、なんですね。1世紀も歌い継がれる、という事実にも、改めて驚かされます。(2013年1月18日更新分/選・文=大久)


Django Reinhardt / Avalon (1935)

 まずはジャンゴ。35年の録音ですが、同年彼は2度この曲を録音しています。最初の版がこちらで聴けるオーケストラ・ヴァージョンで、コールマン・ホーキンス(TS)、ミッチェル・ウォーロップ・オーケストラと共に録音されたもの。現在では「ジャンゴ&アメリカン・フレンズ」というクレジットで出回っているヴァージョンです。

Benny Goodman / House Hop - Avalon (1937)

 ビッグバンド・スタイルでこの「AVALON」を世界中に知らしめた重要人物、と思われるのが、やはりベニー・グッドマンです。彼は生前常にこの曲をレパートリーとしていましたが、ビッグ・バンド編成で最も古いものを探してみたらこちらの動画が出てきました。しかし、いつもニコニコのライオネル・ハンプトン(VIBE)っていう人はサイコーですよね。

Anita O'Day / Avalon (1963)

 1963年の年末に来日したアニタ・オデイ(1919-2006)がTBSスタジオでライヴ録音(ただし無観客)した「AVALON」の映像です。バックは「宮間利之とオールスター・オーケストラ」で、ここには西条孝之介(TS)、芦田ヤスシ(TS)、沢田駿吾(G)等が参加していた模様。長らく入手困難だったソースですが、現在は15曲入りDVDがアメリカで発売されています。それにしてもクール、まさにクールな「AVALON」です。

Ella Fitzgerald, Caterina Valente and Perry Como / Avalon (1966)

 66年、「ペリー・コモ・ショウ」にゲスト出演したエラ・フィッツジェラルドとカテリーナ・ヴァレンテが織りなすスキャットに導かれて、御大ペリー・コモが「AVALON」を披露しています。そういえば野球の世界ではホーン隊を「鳴りモノ」と呼びますが、この場合はスキャットも「鳴りモノ」に入るのでしょうか?(笑)。いずれにせよ、ペリー・コモを応援するにはゴージャスすぎる組み合わせです。

John Pizzarelli / Avalon (1996)

 2012年のクリスマスにはブルーノート東京で営業、という、西洋人とは思えない程の働き蜂(笑)でもあるジョン・ピザレリ。こちらは96年ドイツのTV番組「SWING IT」に出演し、ドイツのティロ・ヴォルフ(THILO WOLF)ビッグバンドを従えて「AVALON」をカヴァーしている模様です。アレンジは、同年ピザレリのアルバムでビッグバンド・アレンジを施したドン・セベスキー。

*動画のリンク切れの場合はご容赦ください。