スヌーピー展 しあわせは、きみをもっと知ること。Ever and Never: the art of PEANUTS
「ピーナッツ」原画(1957年9月22日)
誰もが知っているスヌーピーとその仲間たち。新聞漫画『ピーナッツ』のキャラクターとして1950年10月に登場し、作者のチャールズ・M・シュルツが他界する2000年まで半世紀に渡り描き続けられました。連載が終わった今でも世界中の人々に愛され続けています。その『ピーナッツ』の原画約100点を展示する展覧会が、現在森アーツセンターギャラリー(東京・六本木)で開催中です。 入り口でアストロノーツ・スヌーピーのスタンプを手に押してもらったら、さあ出発。1990年代から50年代へと遡ったスヌーピーが出迎えてくれるスペースを通り、最初のブロックへ。ここでは初期作品やシュルツの人生が紐解かれます。スヌーピーのモデルとなった愛犬スパイクが実は
ポインターの血が入った雑種だったとか、赤毛の女の子に失恋したからチャーリー・ブラウンが好きな女の子は赤毛なんだなとか、後の作品に結びつくエピソー
ドを知ることができます。 次にライトで浮かび上がるスヌーピーの足跡を追って進むと、アトリエが再現されたコーナーへ。制作の秘密に迫るこのブロックで
は、鉛筆ラフやアイデアスケッチ、制作中の映像も見ることができます。シンプルでモダンなミッドセンチュリーの家具に囲まれたアトリエにはなぜか赤べこの姿もありましたよ。 続いて『ピーナッツ』の進化を追うブロック。50年にも渡る新聞連載の間に彼らは徐々に変化しています。キャラクターたちが初めて登場したときの漫画を見ると、フォルムの変化は一目瞭然。最初は犬らしい姿だったスヌーピー、今よりも頭がかなりまん丸で2頭身だったチャーリー・ブラウン、丸いつぶらな瞳のルーシー。そしてストーリー性に富んだ時代や哲学的な時期、読者の想像力を刺激する1コマ漫画など、さまざまな変遷をまとめて感じることができます。 最後のブロックは、1958年につくられた初期フ
ォルムのソフビ製フィギュアや首振り人形などのキャラクターグッズがずらり。アイテムの多彩さは、『ピーナッツ』のキャラクターたちがいかに愛されていたかを物語っているでしょう。スヌーピーやチャーリー・ブラウン、ルーシーと記念撮影できるコーナーもあって、心躍ります。 想像以上に大きな原画には、それが生まれた背景やまつわるエピソード、ときにシュルツの言葉も加えられ、より深く世界に入るこ上「リル・フォークス」原画(1949年)/下「ピーナッツ」原画(1989年7月8日)
とができます。これだけの原画が見られる機会は初めて。原画を所蔵するアメリカのチャールズ・M・シュルツ美術館でも、この規模の展示はできないとか。ぜひ足を運んでみてください。 (吉田宏子=ハモニカブックス)
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修復された自画像
Bob Dylan『Another Self Portrait』
2005年に出版された『ザ・ロック・スノッブス・ディクショナリー』によれば、ボブ・ディランの熱狂的ファンは、彼の旧姓(ジマーマン)にちなんで、ディランのことを「ジミー」と呼ぶのだとか。1991年、全世界のジミー崇拝者を仰天させた発掘音源企画「ブートレッグ・シリーズ」
のスタートから22年、最新・第10集『アナザー・セルフ・ポートレイト』が発売された。今回は、オリジナル・アルバムとしても同じ10作目にあたる、70年発売の2枚組『セルフ・ポートレイト』に焦点を当て、未発表曲や別バージョン、ライブ音源などが収録されている。こうした特定のアル
バムのセッション音源を発掘・編纂する手法は、一般的なリイシュー企画の常套手段だが、これまでオリジナル・アルバムとは別の流れで組まれてきたブートレッグ・シリーズにおいては、むしろ異色の試みと言える。もともと、89年の初CD化以来となる『セルフ・ポートレイト』リマスター再発売のため、マスターテープのチェックなどの作業を進めるうちに構想が膨らんで行ったそうだが、発売当時、酷評された原作アルバムの名誉挽回を図りたい思いも、多少はあったのかも知れない。 CD4枚組の限定盤は、通常盤と同じ発掘音源2枚に加えて、69年8月、ザ・バンドと出演したワイト島のライブ全曲、さらに原作アルバムの最新リマスター盤を収録。1〜2枚目のレア音源、3枚目のライブも
もちろん素晴らしいが、じつは4枚目のリマスター盤をいちばん良く聴いている。聴けば聴くほど、3枚目までは素材音源、4枚目が完成アルバムという、当然の事実を思い知らされる。原作アルバムのプロデューサー、ボブ・ジョンストンは、ディランが気の向くままに録りちらかした雑多な音源を、なんとかアルバムとして形を整えようと苦心惨憺したに違いない。ちょうど同じころ、海の向こう、ロンドンのアビーロード・スタジオでは、フィル・スペクターが、丸投げされた『レット・イット・ビー』の音源と悪戦苦闘していた。その結果、1カ月違いで発売された両アルバムは、どちらも首尾よくまとめられ、セールス的にも成功を収めた。 アメリカーナなどという便利な呼称も無かった70年
当時、弾き語りに近いロウな音源をそのまま発売することは、メジャーレーベルの人気アーティストとしては考えられなかった。スペクター同様、過剰な装飾として語られることの多いストリングスなどのオーバーダビングも、ランディ・ニューマン、74年の名盤『グッド・オールド・ボーイズ』を先取りしたかのような、悪声と甘美なオーケストラの取り合わせが心地良い。 ブートレッグ・シリーズの次回・第11集は、去年アナログ盤で1曲だけ先行発売された、75年のアルバム『血の轍』前後の音源が中心になると思われる。また日本の倉庫で発見された『武道館』のマルチも、すでに米ソニーに届けられたとのことで、お楽しみはまだまだ続く。 さらにシリーズとは別に、ライブ盤を含むディランの
全公式アルバムとベスト盤のみ収録の音源をまとめた、ボックスセット第1集が11月に発売される。こちら、来年リリース予定の第2集では、なんと、これまでのブートレッグ・シリーズ全作を同梱予定とか。 金欠ファンの嘆きをよそに、現在、ジミー御大は、11月末のロイヤル・アルバート・ホール3DAYSへ向け、欧州ツアーの真っ最中である。 (吉住公男=ラジオ番組制作)
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