「Why Can't We Live Together」。必殺のソウル・クラシック、名曲中の名曲ですよね。これでもか、と削ぎ落としまくったシンプルなアレンジなのに、ここまで表情豊か&ソウルフルな曲を、他に知りません。ティミー・トーマスがこの名曲を発表したのは1972年ですが、以降40年間にわたって素晴らしいカヴァー曲が数多く生み出されたと同時に、原曲が持つ、ドープで心にしみるなんとも言えない雰囲気も幾度と泣く再発見されています。で、今回はその「Why Can't We〜」のカヴァー聴き比べ、です。(2013年10月25日更新分/選・文=大久)
Blow Up / Why Can't We Live Together (1974)
大ヒット曲ですから、早速カヴァーされるのも必然、ではあります。こちらは最も早い時期に残された同曲のカヴァーで、なんとイタリアのプログレ・バンド、ブロウ・アップによって残された74年のヴァージョン。プログレ、とはいいながらもファンキーなソウルとかフォーキーなポップスも多数手がけたバンドで、英米のヒット・ポップ曲をカヴァーしまくったアルバム「BLOWIN' IN THE WIND」収録曲。
Jimmy Smith / Why Can't We Live Together (1974)
グっとアーバンでメロウなバージョンですね。ジャズ・オルガン奏者、ジミー・スミスの74年の名作『BLACKSMITH』収録曲で、しかも珍しく女性コーラス隊が歌う、ヴォーカル・ヴァージョンとなっています。同作は他にもバリー・ホワイトのカヴァーとかヤング・ラスカルズのカヴァー等も収録されていて、色々楽しめる1枚です。 Kongas / Why Can't We Live Together (12" 1982)
あれだけ特徴的なリズムアレンジ/グルーヴ感ですから、それを延々をリピートしフロア対応にしたいと考えるのは至極当然かと思われます。こちらはフランスが生んだ最強のファンク・パーカッショニスト/ディスコ・グルーヴのマエストロ、セローン率いるコンガスによる12インチ・ヴァージョン。今調べたら、この曲はフランス、イタリア、スペインでしか発売されてなかったようです。 Maximum Joy / Why Can't We Live Together (1983)
79年、英ブリストルで結成されたダビーなニュー・ウェイヴ・バンド、マキシマム・ジョイによる83年のカヴァー・ヴァージョン。マキシマム・ジョイは(ラフ・トレード所属の)ポップ・グループとも交流があり(メンバーの移動もアリ)、Yレーベル活動期の81〜82年はエイドリアン・シャーウッドのプロデュースで作品を発表していましたが、こちらのカヴァーは、デニス・ボーヴェル・プロデュース。 Sade / Why Can't We Live Together (Live/1984)
ウダウダと書いてきましたが、この曲のカヴァーの真打ちといえばそれはもうシャーデーしかあり得ません。衝撃的、まさに衝撃的なシャーデーのデビュー(当初はバンド、ということになっていました)盤のエンディングには同曲のカヴァーが収録されています。動画は同年モントルー・ジャズ・フェスに登場しこの曲を披露するシャーデー。最高ですよね。 Mystic Diversions feat. Daniele Vit / Why Can't We Live Together (2010)
Gino Vannelli with Metropole Orch / Brother to Brother (2002)
いきなりですが、これ最高です。ジノ・ヴァネリ78年の名曲「BROTHER TO BROTHER」。近年も変わらぬ美声を披露するジノ・ヴァネリですが、60人からのフル・オケでフュージョンの名曲を繰り広げる、という豪華絢爛な共演を見せてくれます。しかも、郷ひろみバリに踊りまくるジノ・ヴァネリ、お若いですね。
Pat Metheny with Metropole Orchestra / First Circle (2003)
The Style Council / Have You Ever Had It Blue? (OST / 1986)
映画「ビギナーズ」に提供した曲で、元曲は前年発表の「WITH EVERYTHING TO LOSE」であること等はおなじみかと思われます。で、この曲はシングルカットもされたスタカンの代表曲のひとつですが、ギル・エヴァンス・アレンジによるフル・バージョンはスタカンの音盤には一切収録されていません(「Uncut Ver.」という名前の別な長尺版がありますが、このOST版より短い)。まあ、どうでもいいことですよね。音楽ファンであれば「ビギナーズ」の2枚組OSTは誰でもお持ちのハズですから。
Jazz Defektors / Ooh! This Feeling (1987)
スタイル・カウンシル全面協力といっても過言ではないジャズ・デフェクターズのアルバムは、録音がウェラー所有のソリッド・ボンド・スタジオと、ファクトリーのイエロー2スタジオ。ウェラーとタルボットで半々ずつミックスも担当、ライターの花房浩一氏がコーディネートして制作されたアルバムで、発売当時日本でも大々的な宣伝が行なわれましたが、セールスとしては寂しいものでした。内容は最高なんですが。 King Truman / Like A Gun (1989)
あまり知られていませんが、スタカンの2人が変名で制作、アシッド・ジャズ・レーベルより発売されたファンク・インスト曲。知られていないのは当然で、当時スタカンと契約中(だけど喧嘩中)だった所属レーベルのポリドールに無断で制作・発売した音源だったと判った(アシッド・ジャズ・レーベルもその事実を隠していましたが)ために、発売後たった3日で店頭から回収された盤だったからです。 Mick Talbot / That Guy Called Pumpkin (1990)
スタカンは幻のアルバム「MODERNISM: A NEW DECADE」と共に89年に解散してしまいますが、翌年発表されたのがスティーヴ・ホワイト主導で制作されたコンピ「A CERTAIN KIND OF FREEDOM」。日本盤のオビには堂々と「ミック・タルボット」というアーティスト名が入っていますが、実際にタルボット名義の曲はこの1曲しかありません。スティーヴ・ホワイト、カワイソス。タルボットは最近でも元気に演奏活動してるようで、ちょっと安心。 The Paul Weller Movement / Here's a New Thing (12" / 1991)
ウェラー先生最初のソロ・シングルは、完全自主制作盤でした。A面曲「INTO TOMORROW」はまあまあのヒットとなりましたが、B面曲「HERE'S A NEW THING」は超ハッピー&ファンキーな最高の曲、なのに、どうもウェラー先生の中では「無かったことにしたい」模様で、「コンピに収録したい」と何度オファーをしても絶対に認めない、という姿勢を先生は貫きました。とはいえ、2003年に先生のB面曲集『FLY ON THE WALL」が出たときには、初っぱなに収録されてましたけど(なんだよ先生、ズルイぞ)。 Paul Weller on "What's In My Bag" (2013)
オマケ動画。最新のウェラー先生のお姿です。大手中古レコード店「AMOEBA MUSIC」が提供する人気ネット番組で、「人気アーティストにレコード屋で買い物させる」という主旨の「WHAT'S IN MY BAG」という番組があるのですが、ここでウェラー先生が登場しています。トロピカリズモのコンピ、コルトレーン「至上の愛」のCD、Tレックス「電気の武者」のアナログ、トラフィック、エチオピアン・ジャズのコンピ、ダイナ・ワシントンその他諸々をお買い上げ。ほほーなるほど、また勉強させていただきます。