てりとりぃ放送局アーカイヴ(2013年10月25日〜2013年11月8日)

 「Why Can't We Live Together」。必殺のソウル・クラシック、名曲中の名曲ですよね。これでもか、と削ぎ落としまくったシンプルなアレンジなのに、ここまで表情豊か&ソウルフルな曲を、他に知りません。ティミー・トーマスがこの名曲を発表したのは1972年ですが、以降40年間にわたって素晴らしいカヴァー曲が数多く生み出されたと同時に、原曲が持つ、ドープで心にしみるなんとも言えない雰囲気も幾度と泣く再発見されています。で、今回はその「Why Can't We〜」のカヴァー聴き比べ、です。(2013年10月25日更新分/選・文=大久)


Blow Up / Why Can't We Live Together (1974)

 大ヒット曲ですから、早速カヴァーされるのも必然、ではあります。こちらは最も早い時期に残された同曲のカヴァーで、なんとイタリアのプログレ・バンド、ブロウ・アップによって残された74年のヴァージョン。プログレ、とはいいながらもファンキーなソウルとかフォーキーなポップスも多数手がけたバンドで、英米のヒット・ポップ曲をカヴァーしまくったアルバム「BLOWIN' IN THE WIND」収録曲。

Jimmy Smith / Why Can't We Live Together (1974)

 グっとアーバンでメロウなバージョンですね。ジャズ・オルガン奏者、ジミー・スミスの74年の名作『BLACKSMITH』収録曲で、しかも珍しく女性コーラス隊が歌う、ヴォーカル・ヴァージョンとなっています。同作は他にもバリー・ホワイトのカヴァーとかヤング・ラスカルズのカヴァー等も収録されていて、色々楽しめる1枚です。
Kongas / Why Can't We Live Together (12" 1982)

 あれだけ特徴的なリズムアレンジ/グルーヴ感ですから、それを延々をリピートしフロア対応にしたいと考えるのは至極当然かと思われます。こちらはフランスが生んだ最強のファンク・パーカッショニスト/ディスコ・グルーヴのマエストロ、セローン率いるコンガスによる12インチ・ヴァージョン。今調べたら、この曲はフランス、イタリア、スペインでしか発売されてなかったようです。
Maximum Joy / Why Can't We Live Together (1983)

 79年、英ブリストルで結成されたダビーなニュー・ウェイヴ・バンド、マキシマム・ジョイによる83年のカヴァー・ヴァージョン。マキシマム・ジョイは(ラフ・トレード所属の)ポップ・グループとも交流があり(メンバーの移動もアリ)、Yレーベル活動期の81〜82年はエイドリアン・シャーウッドのプロデュースで作品を発表していましたが、こちらのカヴァーは、デニス・ボーヴェル・プロデュース。
Sade / Why Can't We Live Together (Live/1984)

 ウダウダと書いてきましたが、この曲のカヴァーの真打ちといえばそれはもうシャーデーしかあり得ません。衝撃的、まさに衝撃的なシャーデーのデビュー(当初はバンド、ということになっていました)盤のエンディングには同曲のカヴァーが収録されています。動画は同年モントルー・ジャズ・フェスに登場しこの曲を披露するシャーデー。最高ですよね。
Mystic Diversions feat. Daniele Vit / Why Can't We Live Together (2010)

 さて最後は2010年に残された傑作カヴァーを。イタリアのラウンジ・ジャズ系ユニットによるアコースティック・ボサのアレンジを取り入れた現代クラブ仕様ヴァージョン。ミスティック・ディヴァージョンズは2001年にフランチェスコ&マリオ・プッチオーニ兄弟を中心に結成され、ダウンテンポ・ビート系の人気ユニットとなりましたが、中心人物のフランチェスコが09年に肺がんで他界。本曲を収録した『ANGEL SOUL』は彼の死後残された素材をくみ上げて発表された、ユニットのラスト・アルバムとなりました。


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 以前RUMERという女性シンガーによるバート・バカラック「サンホセへの道」のカヴァー動画を紹介した際に「バックはオランダのメトロポール・オーケストラ」という記述をしました。で、今回の放送局は、そのメトロポール・オーケストラ特集となります。オランダのみならず、実は世界でも最も有名なフルタイム・オーケストラのひとつである彼らは1945年にオランダ公共放送専属楽団として活動開始、ジャズやポップスとの共演活動で60年にもわたって第一線で活躍する彼らのライヴ動画を集めてみました。(2013年11月1日更新分/選・文=大久)


Steve Vai with Metropole Orch / Liberty (2005)

 「ド変態」という素敵な称号を常に頂戴する、変態界の超名門フランク・ザッパ・バンド卒業生でありながら、なぜか全うなギター・ヒーローになってしまった(笑)スティーヴ・ヴァイ。2005年にメトロポール・オケと共演した模様は、CDやDVDでも発売されていますが、こちらはその中の1曲。ヴァイのソロ・キャリアを確固たるものにしたヒット作『PASSION & WARFARE』のオープニング曲を、オーケストラとともにゴージャスに披露しています。


Gino Vannelli with Metropole Orch / Brother to Brother (2002)

 いきなりですが、これ最高です。ジノ・ヴァネリ78年の名曲「BROTHER TO BROTHER」。近年も変わらぬ美声を披露するジノ・ヴァネリですが、60人からのフル・オケでフュージョンの名曲を繰り広げる、という豪華絢爛な共演を見せてくれます。しかも、郷ひろみバリに踊りまくるジノ・ヴァネリ、お若いですね。

Pat Metheny with Metropole Orchestra / First Circle (2003)

 ECMからの最後のリリースとなった84年のアルバム『FIRST CIRCLE』は、彼にとって(当時)最大のヒットを記録しましたが、充実した演奏力とアレンジ力は、こちらの03年オーケストラ版でも健在。03年のノース・シー・ジャズ・フェスティヴァルにて、パット・メセニーはメトロポール・オーケストラを従えて出演していますが、こちらはそのライヴの中からの1曲。これもホント最高ですねえ。

Chaka Khan with Metropole Orch / I Feel For You (2010)

 こちらはTV放送された、2010年のチャカ・カーンとの共演ライヴ。もちろん生演奏ですから、初期ヒップホップ的なギッチョンギッチョンのデジタル・アレンジを望むべくもありませんが、ちゃんとゴージャスなソウル・ジャズ・オーケストラ・アレンジになっているあたりはさすがです。チャカはジャズ・クラブでのライヴを数多くこなしてることもあり、ジャズ系の名演も多く残っていますが、個人的にはやはりこの曲はハズせませんねえ。

Basement Jaxx with Metropole Orch / Samba Magic (2011)

 メトロポール・オーケストラは、ほんとに「どんな相手でも」共演しちゃいます。そこがやたら格式を重んじる他国の楽団とは異なるんです。こちらは2011年、クラブ界隈を鳴り物入りで闊歩するスター・クリエイター・チーム、ベイスメント・ジャックスとの共演動画。オケのアレンジもベイスメント・ジャックスがみずから担当したこの共演は、同年XLレコーディングからライヴ盤CDとして発売されています。ブラジリアン・ハウスを演奏する交響楽団、というなかなかお目にかかれないケースですよね。


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 ポール・ウェラー先生の特集です。当方が先生に直接お話をうかがったのは「22 DREAMS」の時(インタビュー)なのでもう5年も前になりますが、ここぞとばかりにカーティス・メイフィールド話を長々と繰り広げたり、先生のギブソンSGのことを細かく聞いてみたりと、アルバムの宣伝にはあまり貢献できなかったことは自覚しております(笑)。それはともかく今回は、ウェラー関連の「プチ・レア」な曲をご紹介。もっともっとレアな曲も沢山ありますが、当方は「重箱の隅フェチ」ではないのでその点はご理解頂けると幸いです。(2013年11月8日更新分/選・文=大久)


The Style Council / Have You Ever Had It Blue? (OST / 1986)

 映画「ビギナーズ」に提供した曲で、元曲は前年発表の「WITH EVERYTHING TO LOSE」であること等はおなじみかと思われます。で、この曲はシングルカットもされたスタカンの代表曲のひとつですが、ギル・エヴァンス・アレンジによるフル・バージョンはスタカンの音盤には一切収録されていません(「Uncut Ver.」という名前の別な長尺版がありますが、このOST版より短い)。まあ、どうでもいいことですよね。音楽ファンであれば「ビギナーズ」の2枚組OSTは誰でもお持ちのハズですから。

Jazz Defektors / Ooh! This Feeling (1987)

 スタイル・カウンシル全面協力といっても過言ではないジャズ・デフェクターズのアルバムは、録音がウェラー所有のソリッド・ボンド・スタジオと、ファクトリーのイエロー2スタジオ。ウェラーとタルボットで半々ずつミックスも担当、ライターの花房浩一氏がコーディネートして制作されたアルバムで、発売当時日本でも大々的な宣伝が行なわれましたが、セールスとしては寂しいものでした。内容は最高なんですが。
King Truman / Like A Gun (1989)

 あまり知られていませんが、スタカンの2人が変名で制作、アシッド・ジャズ・レーベルより発売されたファンク・インスト曲。知られていないのは当然で、当時スタカンと契約中(だけど喧嘩中)だった所属レーベルのポリドールに無断で制作・発売した音源だったと判った(アシッド・ジャズ・レーベルもその事実を隠していましたが)ために、発売後たった3日で店頭から回収された盤だったからです。
Mick Talbot / That Guy Called Pumpkin (1990)

 スタカンは幻のアルバム「MODERNISM: A NEW DECADE」と共に89年に解散してしまいますが、翌年発表されたのがスティーヴ・ホワイト主導で制作されたコンピ「A CERTAIN KIND OF FREEDOM」。日本盤のオビには堂々と「ミック・タルボット」というアーティスト名が入っていますが、実際にタルボット名義の曲はこの1曲しかありません。スティーヴ・ホワイト、カワイソス。タルボットは最近でも元気に演奏活動してるようで、ちょっと安心。
The Paul Weller Movement / Here's a New Thing (12" / 1991)

 ウェラー先生最初のソロ・シングルは、完全自主制作盤でした。A面曲「INTO TOMORROW」はまあまあのヒットとなりましたが、B面曲「HERE'S A NEW THING」は超ハッピー&ファンキーな最高の曲、なのに、どうもウェラー先生の中では「無かったことにしたい」模様で、「コンピに収録したい」と何度オファーをしても絶対に認めない、という姿勢を先生は貫きました。とはいえ、2003年に先生のB面曲集『FLY ON THE WALL」が出たときには、初っぱなに収録されてましたけど(なんだよ先生、ズルイぞ)。
Paul Weller on "What's In My Bag" (2013)

 オマケ動画。最新のウェラー先生のお姿です。大手中古レコード店「AMOEBA MUSIC」が提供する人気ネット番組で、「人気アーティストにレコード屋で買い物させる」という主旨の「WHAT'S IN MY BAG」という番組があるのですが、ここでウェラー先生が登場しています。トロピカリズモのコンピ、コルトレーン「至上の愛」のCD、Tレックス「電気の武者」のアナログ、トラフィック、エチオピアン・ジャズのコンピ、ダイナ・ワシントンその他諸々をお買い上げ。ほほーなるほど、また勉強させていただきます。


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