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2012年12月14日(金)

歌はいかがですか【二〇一二年 師走】
[山上路夫 × 村井邦彦 × 日向大介 × 宇野亜喜良]








時間感覚をシャッフルする究極のベスト盤 ~「日本の恋と、ユーミンと。」

 ユーミンの40周年記念ベストアルバム『日本の恋とユーミンと』を聴いた。本人公認のベスト盤としては76年の『ユーミン・ブランド』以来7作目に当たるが、本盤も含めユーミンは過去一度も、楽曲をリリース順に並べていく形のベスト盤を出したことがない。少し前に出た山下達郎の3枚組ベストは発表順だったし、むしろそれはベスト盤の基本構成なのだが、なぜユーミンはリリース順にベストを組まないのだろうか。
 彼女はアルバムごとにアレンジをガラリと変えることが多い。アコースティックな肌触りの『紅雀』の次が思い切りポップな『流線形80』で、全編ブルー・アイド・ソウル風の『パール・ピアス』の次がELO風の派手なシンセ・サウンドで統一された『リ・インカーネーション』など、アレ

ンジがアルバムの色調を決定付けている。だから、代表曲をリリース順に並べると、曲ごとにアレンジの質感が変わり落ち着かなくなる。でもそれだけではない。初期の曲と現在の曲は、らせん状に上昇・進化してい

るものの、根は同一だと感じさせる部分がある。
 その意味で、本盤3枚目の終盤、「ダンスのように抱き寄せたい」と「ひこうき雲」の流れは興味深い。同ベストでは最も新しい2011年発表の曲と、デビ

ューアルバムの1曲目を続けて収録している。声質こそ変わったが、続けて聴いてもさして違和感はない。似た状況はライブで何度か経験している。86年の苗場コンサートでは当時の最新盤『DA・DI・DA』から2曲歌った後、『ひこうき雲』のナンバーを続けて2曲歌った。2000年の『フローズン・ローゼス・ツアー』では新作「流星の夜」のサビに「アニヴァーサリー」と「雨の街を」を重ねて歌い、01年の『アケイシャ・ツアー』では、やはり最新曲「パートナーシップ」に続き「ひこうき雲」を共に弾き語りで披露した。こういった技は、単に楽曲の普遍性というだけでは語りきれないものがある。
 ユーミンの歌には、時制を歪めた表現を時折見かける。〝懐かしすぎる未来〟(「アカシア」)〝永遠の一

瞬〟(「満月のフォーチュン」)〝昔は未来の向こうにもある〟(「テイク・ミー・ホーム」)或いは『昨晩お会いしましょう』……。本盤収録の楽曲も「水の影」や「あの日にかえりたい」など、これはどの視点で、いつの時間で語っているのだ?とふと考えてしまう。逆に「リフレインが叫んでる」や「哀しみのルート16」など、主人公の思い出を聴かされているはずが一瞬、聴き手がその現場に立たされて、その時の心境に置かれるような錯覚さえ受ける。言い換えれば聴き手がどの時点に立っても体感可能なのだ。この時間を自在に往還する能力は、作詞のみならずメロディーやサウンドでも発揮されているのではなかろうか。
 ユーミン作品のうち、40年の間、常に顔をみせるスタイルが2つある。ひとつ

はオールディーズ、もうひとつはラテンで、共通しているのは「新しくはないが、古びない」点。オールディーズは例えば多感な少女時代の感性に引き戻すための術として用いるが、ラテン、特にブラジリアン・ミュージックを時折、隠し味に使うのは、ある種の「サウダージ」感覚から来るのではなかろうか。
 ポルトガル語の「サウダージ」とは「懐かしさと憧れを統一させ、粟立つような快感を与える」という意味だと、平岡正明の著書で教えられた。ユーミンの楽曲は、この「サウダージ」の感覚が織り込まれてはいないか? 初めて聴くのに懐かしく、何度聴いても磨り減らない。まさに懐かしすぎる未来。デビュー曲から順に並べる行為は、彼女に限っては意味のないことなのだろう。

 思えば『ひこうき雲』の帯コピー「魔女か!スーパーレディか!」は、今回の『日本の恋とユーミンと』にもそのまま当てはまるのではないか。スーパーレディの称号はこれだけの名曲を世に送り出した彼女にこそふさわしく、40年という時間を往還できるスタイルは、まさに魔女のなせる業なのだ。
(馬飼野元宏=『映画秘宝』編集部)
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松任谷由実 四〇周年記念ベストアルバム『日本の恋と、ユーミンと。』発売中/特設サイトはこちら



自主制作マンガ界のキュートな凶悪

 漠然と「上手」「下手」で、マンガに優劣をつけるのは感心しない。「達者な絵で描かれたつまらないマンガ」と「稚拙な絵で描かれた面白いマンガ」であったら迷うことなく後者を選ぶ。しかし、「達者な絵」にも「稚拙な絵」にも、それぞれに「面白い絵」と「つまらない絵」があり、では「稚拙な面白い絵」は、もはや「達者な絵」じゃないか。そして、マンガ表現に触れてもっとも幸福感を

感じるのが「面白い稚拙な絵で描かれた面白いマンガ」なのです。
 この流れで、窓ハルカという作家を紹介するのは失礼な話だけれど、正直「上手」と言ってしまうのも何か嫌味な画力の持ち主である。しかし、その魅力に心を深々と射抜かれている俺だ。「たこぶえ」3号(2011年/同人誌)に掲載された作品「他人の話」が初見だったが、この絵でこそ成立するラブコメで、面

白かった。その時、既にモーニングマンガオープンで奨励賞を受け、少年チャンピオン誌でデビューしながら、同人誌にも意欲的に発表を続けていた。何とも憎めない愛らしさに、時々生々しい体温が加わる不安定な絵柄。愛憎とバイオレンスと歪んだセックス観、といった題材を飄々とペンにのせ、ちょっと変わった恋心みたいに語ってしまう軽さ。ふと「カワエグい」というダサい言葉を思いついたが、使わないから安心して。そんなカワエグい(使った)短編集『滅亡』を昨年自費出版。体裁に意気込みがなく、おまけに奥付もない。新宿の模索舎の店頭で見つけた。まとめて作品を読むと、コマ運びの手際にハッとする。描きたいことがあって、それを間違いなく描いている。窓ハルカは結局は上手い作家なのだ。

 最近、「ANSHIN」(2012年/同人誌)に、MatildaMargarita名義で発表した作品「スランプ」が気になる。自身を投影したと思しき主人公が、自分のマンガに自信をもてずにいる。「〝そんなことない/私は好きです〟と言っていただいても自分がそう思えないので描き続けるのは難しい」と独白を続ける。いつものシニカルな笑いに寂寞とした空気が色濃い。こんな作家の吐露に読者はどうすればいいか。まあそれも「好き」としか言えない。残酷にも。
 一部で話題となった実録マンガ「Oー157と溶血性尿毒症になって入院したよ♥」も含め、相当量の作品がネット上のどこかに置いてあるが、こういう情報は移ろいやすいので、興味のある方は是非お早めに。
(足立守正=マンガ愛好家



数々のヒット曲で甦る、越路吹雪の栄光の日々。
そして傍らにはいつもあの人がいた


 歌手・越路吹雪と、そのマネージャーでもあった作詞家・岩谷時子との日々が描かれた舞台『Chanson de 越路吹雪 ラストダンス』を観た。私が拝見したかめありリリオホールでのプレビュー公演も充分満足させられるものであ

ったが、現在上演中のシアタークリエではさらにこなれた内容による躍動的な舞台が日々繰り広げられているに違いない。
 以前、越路の役をピーターこと池畑慎之介が演じ、よきパートナーの岩谷役に高畑淳子が扮した舞台『越

路吹雪物語』を日生劇場で観たことがあり、越路のファンを自任する池畑の熱演が特に印象に残っている。高畑の岩谷役も本人に直接会って散々勉強したというだけあって、出色であった。今回は瀬奈じゅんの越路、斉藤由貴の岩谷、いずれも本人に似せることにはそれほど拘っていないであろう代わりに、役者の個性が光る魅力的な演技が見られる。
 なんといっても我々世代には、アイドルとして認識されている斉藤由貴の抑えた演技が好ましく、瀬奈の歌も堂に入っていた。実際の岩谷時子の世話人として、リハーサルから何度も舞台を観てきた草野浩二氏によれば、彼女の歌はメキメキよくなっていったとのこと。さすがは宝塚のトップスターだけのことはある。
 個人的にかなり惹かれたのは、ストーリーテラー的

な存在でコミカルな動きを見せる宇野まり絵の存在だった。斉藤の後輩にあたる東宝芸能所属の女優さんだそうで、チャーミングで歌も達者で、今後が楽しみな逸材だ。舞台の前半では大活躍する彼女の出番が後半で少なくなってしまったのが、この舞台で唯一の残念な点であったことも事実。
 そして今回の舞台で何より楽しみだったのが、江草啓太氏の音楽だったわけだが、大舞台に映える素晴らしい演奏とアレンジでその期待に存分に応えて下さった。氏のピアノ演奏にはある仕掛けがあって、ストーリーの一場面ではそのタネ明かしもされる。「愛の讃歌」「ラストダンスは私に」などの劇中ナンバーはいずれも越路のオリジナル・レコーディングに忠実なアレンジでありながらもしっかりとドラマティックな味付

けが施された非常に好ましいもので、幕が下りた後の余韻も心地よかった。ザッツ・エンターテイメント!
 岩谷、越路以外にも、真木小太郎、内藤法美、山本紫朗、渋谷森久ら、ふたりを取り巻く実在の人物が次々と登場するのも楽しい。一人何役も演じられる中、柳家花緑が本人に似せつつもオーバーな演技を見せる菊田一夫が特に可笑しく、久世ドラマ『時間ですよ』の菊田先生をふと思い出した。ほかにも仕掛けがいっぱい。三谷幸喜の舞台などでその手腕を発揮し続けている山田和也の演出力はもっと評価されていい筈だ。
 この後、名古屋・大阪公演も控えているが、シアタークリエでは19日まで。読者&同人の皆さま、どうかお見逃しなきよう。
(鈴木啓之=アーカイヴァー)
写真提供・東宝/「Chanson de 越路吹雪 ラストダンス」公式HPはこちら



2012年10月26日(金)

歌はいかがですか【二〇一二年 神無月】
[山上路夫 × 村井邦彦 × 日向大介 × 宇野亜喜良]








やまがたすみこが歌ったCMソングの集大成が発売!

 世間一般にCMソングの女王と言って思い浮かぶのは、天地総子、のこいのこ、藤本房子らの名前であろう。彼女達独特のアクの強い声、例えるなら「原色感の強い声」は、15秒のCM尺の中で強烈なインパクトを残し続けて来た。だがその一方で、原色の鮮やかさとは真逆の「透明感」で、知らな

いうちにその歌声を世間に浸透させていたCMソングの女王がいる。何を隠そう、アーティストとしてもお馴染みのやまがたすみこである。
 彼女の名前は知っていても、彼女がCMソングを数多く歌ってきたという事はほとんど知られていないだろう。今回、TVエイジ・

シリーズで、本誌編集長・濱田高志監修のもと、初めてやまがたすみこのCM作品集が編まれる事になった。タイトルは「やまがたすみこCM WORKS~うれしいね、すみちゃん」で、10月24日にウルトラヴァイヴから発売される。選曲を担当したのは濱田氏とやまがたすみこ本人。一足先に試聴させてもらったが、あれもこれもやまがたすみこだったのか! という単純な驚きに圧倒される。
 まず驚かされるのが、彼女が担当したサウンドロゴである。「NTT」「味の素」「ベネッセ」「久光」「積水ハウス」など、誰もが思い出す事が出来る一連の有名サウンドロゴはすべてやまがたすみこによるものだった! これらはCDの中盤で一気に登場するが、思わず笑ってしまうほど圧巻である。そして「イソジ

ン」(♪ただいまーのあとはー、のあれです)、「スライスチーズは雪印」など、これもそうだったの?という曲が続く。やまがたすみこの歌はそれなりに聴いてきたつもりであったが、彼女が歌っていたとは全く気付かなかった曲のオンパレードである。そしてこれらのCM曲に一貫しているのは、声の透明感である。「商品が上品になる声」とでも言えばいいのだろうか。とにかく声だけでCM画面をクリアーに見せる効果が

ある。そして彼女に声を依頼するクライアント側も、その効果を狙っているであろう事が伝わってくるのである。特に多重録音コーラスを多用している曲については「クリアー感」は絶大である。
 また今回のCDでもうひとつ聴きものなのは、いわゆる15秒、30秒尺ではないフルサイズのCMソングも収められている点である。これがどれも素晴らしい出来なのだ。テレビ信州「みつめあえばそこに」、日本

生命「ありがとうあなた」、小林製薬「蝶」、「磐田市の歌」、「倉敷チボリ公園」、ハウスシチュー「お帰りなさい」(作詞・松本隆! 作曲・筒美京平!)など、CMを抜きにしても「いち楽曲」として楽しめる歌が随所に挟み込まれている。どれも今回の企画が無かったら永遠に失われていたかも知れないと思うと恐ろしい。やまがたファンは必携の一枚と言っていい。そして、一枚聴き終えると、この歌声が新作を出さないのは惜しい、という気持ちにかられるのである。罪な一枚だ。
(川口法博=音楽ディレクター)
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●「やまがたすみこ CMWORKS~うれしいね、すみちゃん」発売・ウルトラヴァイヴ/価格¥2625(税込)/発売中



低山歩きのすすめ(秋田県・駒ケ岳)

 今年の夏は特に暑かったので、涼しい場所を求めて、8月末から9月にかけて東北地方に出かけた。しかしそう甘くはない。今年の東北は例年になく暑く、どこのホテルのフロントでも「今年は暑いですね」の挨拶で始まったし、地元の新聞には、ダムが干上がって水不足だと大きく書いてあ

った。
 向かったのは田沢湖の少し北にある乳頭温泉。周りにはブナの森があり、暑いとは言っても、朝晩は冷気が漂う高原地帯で気分のよい場所だ。目指す山は、秋田県の最高峰・秋田駒ケ岳。岩手県との県境に位置し、山頂近くになるとすぐそばの岩手山が望める。

 高い山といっても、8合目までバスで上ることが出来るので、山頂までは楽に行ける。登山口から1時間ほども歩くと山頂のカルデラ湖・阿弥陀池に出る。ここには板が渡した道があり、その両側に花の終わったチングルマの群落が一面に広がっていた。そこから最高峰の女目岳に登り、すぐ降りてきて、急坂を20分ほどあがると男岳に出る。馬ノ背と呼ばれる稜線を歩いて横岳や焼森山へと向かい、途中で登山口の方を望むと田沢湖が広がりとてもいい眺め。また、道の右側には阿弥陀池を見下ろすことが出来る(写真1)。焼森山へ着くとそこは一面ガレ地で、高山植物の女王といわれるコマクサが咲くような場所に思われるが、訪れた9月初旬には何もなかった。
 ここから山を下りそして緩やかに登って(写真2)、

1時間ほどで湯森山に出る。山頂にベンチがあったので、ここで昼食を取った。宿で作ってくれたおにぎりと、コンビニで買ったカップラーメン(カレー味!)を食べた。だれもいない広々とした高原地帯を眺望しながら、ゆったりとした気分でいい昼食だった。ここは6月終わりから8月中頃まで、多くの高山植物が見られる場所として有名で、多くの人が訪れるという。が、シーズンを過ぎた今、平日の

昼下がりには人もなく、とても贅沢な時間であった。
 その後、となりの笊森山に足を伸ばした。これらの山々は広々とした緑の海の真っ只中にあり、まるで草原の海の中を泳いでいるような気分で歩くことが出来る。道の先には、ホテルの近くの乳頭山が見えるが(写真3)、そちらに行かず、また来た道を戻りスタート地点の8合目のバス停に戻ってきた。
 途中何度か休憩をとって、

7時間くらいの山行だった。快い疲労感で下山し、温泉に入ってから飲んだ地ビールと地酒はまた格別(写真4)。これがあるからまた山歩きに出かけてしまうのだ。
 この後、宮城県の栗駒山といくつかの温泉をめぐって、夏休みは終わった。その思い出をエネルギーにして、新たな仕事に取り組んでいる。 
(川村寛=小学館クリエイティブ・編集者)



11月末発売決定!ロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズの新作情報

“奇跡のリリース”と評され大ヒットを記録した『フル・サークル』から5年。ファンが待望する最新作がいよいよ完成、日本先行発売が決定! 今作でももちろん、ロジャー・ニコルス、マレイ&メリンダ・マクレオド兄妹のオリジナル・メンバー3人が集結。ロジャーが作曲しカーペンターズの代表曲となった「愛のプレリュード(WE'VE ONLY JUST BEGUN)」のSCOF版リメイクや、ネスカフェCMソングとしてお馴染のロジャー作「ワン・ワールド・オブ・ネスカフェ」のリメイク、盟友ポール・ウィリアムスとの共作曲、新機軸となるジャズ・アレンジの曲など、ファン垂涎の内容。高音質K2HD+HQCD盤、ライナー・ノーツ・歌詞・対訳付。 ビクターエンタテインメント CD:VICP-75089 2,800円(税込)

●「週刊てりとりぃ」11月は、間もなく待望の新作をリリースするSCOF大特集月間となります。第1週(11月2日更新)は、新作『MY HEART IS HOME』のアルバム・プレビュー動画を独占先行配信します! お楽しみに。




手塚治虫『カラー版 鉄腕アトム 限定BOX 5』10月26日発売!

発行:小学館クリエイティブ 発売:小学館
定価:14,600円+税 B5変形・702ページ

▼手塚治虫の代表作「鉄腕アトム」の連載開始から今年は60年。来年はアニメ放送50周年になります。ロボットの少年・アトムを主人公に科学文明と人間の相克を描きだしたこの作品は多くの読者を魅了しました。
▼1963年1月1日から全国フジテレビ系で放映されたアニメ版は最高視聴率は40%を超え、アメリカでもNBCを通じて放送。その後、世界各国で放映されました。その名作「鉄腕アトム」を人気のカッパコミクス版で復刻します
▼問合せ:小学館クリエイティブ(担当:山田)03-3288-1354 http://www.shogakukan-cr.co.jp/book/b101607.html
▼全巻購入特典として、著者サイン入りアトム万年筆と、カッパコミクス別冊に収録された2作品と解説をまとめた小冊子をプレゼント

2012年8月31日(金)

歌はいかがですか 【二〇一二年 葉月】
[山上路夫 × 村井邦彦 × 日向大介 × 宇野亜喜良]








千駄木「和菓子 薫風」開店
和菓子雑感 

 まだまだ残暑厳しき折ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか?流石にこの暑さだと、私のフィールドワークである古書&中古レコード散策も鈍りがちです。とはいえ、家でじっとしているのは元来好まない性質ですから、結局は外出してしまいます。ですが、この暑さでは、休憩も増えるというもの。ついつい喫茶店

に入る回数が増えてしまいます。
 冷房の効いた部屋で飲む熱い珈琲やお茶が私にとっての一服の清涼剤。そこに甘味でもあればなお良く、夏バテも和らぐというもの。
 そんな散策のお伴に絶好のお店が先月、東京都文京区千駄木に開店しました。「和菓子 薫風」。場所は団子坂交差点から一本路地

に入った所で、根津神社や谷根千散歩の折に立ち寄るには非常に便利な場所にあります。同店は、フード・コーディネイター出身の店主が素材から厳選して作った和菓子とそれに合うこだわりの日本茶、中国茶、日本酒を提供するというカフェ。今回、ご紹介したいのが、「和菓子薫風特製どら焼き」。レモン、タロッコオレンジ、弓削瓢柑(ゆげひょうかん)、ブルーベリー、さくらんぼの五種類(なお、季節によって、フルーツの種類は変更になる場合があります)。ハチミツが入ったしっとりふわふわの生地に北海道産大納言小豆たっぷりの餡。そこに、それぞれのフルーツ・コンフィをミックスしたもの。これまで、いちご大福やフルーツどら焼きといった生果実を餡やクリームで包んだ洋菓子テイストの物はあ

ったものの、こちらは、きっちりと手仕事を加えたコンフィと餡が組み合わさった和菓子。コンフィと餡のバランスが絶妙で思わず、何種類も食べたくなります。そして、日本茶は勿論ですが、特に中国茶が非常によく合うようです。
 実は、古書店を中心にたまに散歩するのが、この千駄木界隈。現在、住んでいる駒込からも自転車で10分足らずの距離ですので、ぶらりと一回りします。古書店以外にも、古道具屋、喫茶店、蕎麦屋、饂飩屋、甘味処、煎餅屋…など、まだまだ情緒溢れるお店がたくさんあります。実は、ここ千駄木は個人的にも4年ほど居を構えた所で、その結果、都内でも大人が落ち着ける場所の一つとして、再認識した場所でもあります。
 千駄木に新しい和菓子の店。かつ、大人が寛げる店。

和菓子 薫風


文京区千駄木に、出来たての和菓子と美味しいこだわりのお茶、日本酒を楽しんでいただくお店「和菓子薫風」がオープン!昼は日本茶、中国茶、日本酒と和菓子のマリアージュをお楽しみいただける「薫風カフェ」。夜はヨガ、ビーズ教室、中国茶講座、和菓子教室などワークショップと和菓子をお楽しみいただく「薫風倶楽部」。是非、足をお運びください。

●住所:東京都文京区千駄木2-24-5-1F(地下鉄千代田線千駄木駅 団子坂出口徒歩3分)
※出口右折、30mほど直進「コムガーデン」を右折、一本目の通りを越えた左側
●営業時間
・「薫風カフェ」13:30~17:30(LO)18:00(Close) 水曜定休 土日不定休
・「薫風倶楽部」19:00~21:30 イベントスケジュールによる
※イベント等の情報はこちらのブログをチェック→ http://ameblo.jp/wagashikunpu/
「和菓子 薫風」。同店が今後どういった展開をしていくのか楽しみです。カフェ終了後は、コミュニティスペースとして、各種イベントも行なっていくようです

よ。そういえば、店主お勧めの水羊羹。まだ食しておりません。また近々にお伺いしますのでよろしくお願いします。
(星健一=会社員)



スティーヴン・スピルバーグが弱冠27歳で監督した、
不滅のパニック・アクションの傑作がブルーレイで発売! 


 1975年、パニック映画の時代に真打ちとして登場したのが、今回ブルーレイ化された『ジョーズ』。この時期のハリウッド映画は人間の手に負えなくなった巨大な建造物や乗物を事故にあわせ、近代文明に警鐘を鳴らしていた。というより身近な世界の崩壊を、映画ならではの大スペクタクルに仕立て観客の興奮を煽っていた。
 『ジョーズ』は、平和な

アメリカ東海岸のビーチに突如現れた巨大人食いザメの恐怖と、それに立ち向かう人々を描いた動物パニック映画の代表作にして、スティーヴン・スピルバーグ監督の出世作でもある。本作以前にも動物パニック映画は存在していて、代表的なものがアルフレッド・ヒッチコック監督の『鳥』。『鳥』では、鳥による襲撃の多発をよそに軽食堂で呑気に喋っている人たちが、

隣接のガソリンスタンドが鳥に襲撃され大爆発しパニックに陥る描写があるが、「ジョーズ」では、サメの危険を説く主人公の警察署長(ロイ・シャイダー)の心配をよそに、海水浴の利益を優先する市長や街の有力者に鼻であしらわれるシーンが出てくる。また水中で海水浴客の泳ぐ脚を狙うサメの主観映像で動物パニックものの恐怖感を煽るが、ご本尊である人食いザメをなかなか登場させない。この正体のわからない恐怖演出は、スピルバーグのデビュー作『激突!』のトラック襲撃の恐怖に通じ、それ以前に我々日本人も『ゴジラ』で良く知るところの恐怖描写だ。『ジョーズ』はパニック映画でもあり、スリラーでもあり、ホラーでも、社会への警告映画でもあるのだ。そして、もっとも重要なことは、巨大ザメ



JAWS コレクターズ・エディション(デジタルコピー付)(初回生産限定) [Blu-ray]
2012年08月22日発売
定価(税込):¥5,040
(税抜¥4,800)
品番:GNXF-1655
アマゾンへのリンクはこちら
に立ち向かう人々の勇気。戦う男たちは前述の警察署長と漁師(ロバート・ショウ)、若き海洋学者(リチャード・ドレイファス)。公務員と荒くれ者とインテリの組み合わせも面白いが、人間が勇敢に戦いボロボロになりながら勝利する、これが、本作が公開から37年経った今でも娯楽映画の名作と呼ばれる最大の理由だ。
 今回のブルーレイ化にあたり、ユニバーサルでは現存するフィルムからオリジナルのカメラネガを選び、スキャニングによる修復作

業を行っている。経年劣化による傷の除去、オリジナルに忠実に色調整を行った結果、冒頭の曇天下の悲劇や、真夏の鮮やかな波光など実にクリアな画質で蘇った。さらにオリジナルのモノラル音声は2000年に5・1チャンネルにミックスアップされたが、今回さらに7・1チャンネルにアップ。自宅でも大サラウンドで衝撃の瞬間が楽しめるほどグレードアップしている。
(馬飼野元宏=「映画秘宝」編集部)



「ミュージックファイルシリーズ」20周年でバップにサイト開設! 

 「ミュージックファイルシリーズ」とは、筆者がバップに勤務していた頃の1992年に、テレビドラマのサントラ音源(劇中に流れていた音楽、BGM、映像音楽)の中から、一部の作品を除いて、過去にレコード、CDで発売されることの無かったものを「発掘」してCDにしていくことから始めたシリーズです。
 そのスタートは、「伝説のアクションドラマ音楽全集」というシリーズ名で、「ミュージックファイルシリーズ」という名前は、リリースを重ねてカタログが増えていった後に、社内外から呼ばれるようになったネーミングだったのです。
 後に続くとは思わずに最初に発売したのは、92年9月21日発売分でCD5枚、『太陽にほえろ!ミュージックファイルー東宝レコード音源復刻盤ー』『探偵物

語ミュージックファイル』『あぶない刑事ミュージックファイル』『もっとあぶない刑事ミュージックファイル』『ジャングル+NEWジャングルミュージックファイル』、一ヶ月おいて11月1日に『傷だらけの天使ミュージックファイル』『俺たちの勲章ミュージックファイル』『大追跡ミュージックファイル』『俺たちは天使だ!ミュージックファイル』『プロハンターミュージックファイル』というラインナップで、1回あたり5タイトルずつ発売した合計10枚でした。
 その後も、本当に、歴代上司や、同僚の理解も得つつ、中には同僚の発信で生まれたCDもあり、筆者が2002年に、玉突き人事異動を機にバップを辞めるまでの間に250弱のタイトル数をリリースしました。バップを辞めた後も、コロ

ムビア、ポニーキャニオン、テイチク、ウルトラ・ヴァイヴなどで「ミュージックファイル」の名を付けたCDを断続的に継続してきて、今年で20周年です。
 20周年だから何かをということで、このサイト立上げではなく、これも偶然で、5月くらいにバップの方から、ミュージックファイルシリーズのカタログの見直しと配信アルバムのリリースについての相談を頂きました。過去何度か、ミュージックファイルシリーズをバップで再び…という話を頂いていたのですが、頂く度に頓挫して、正直信用してなかったのですが(苦笑)、今回頂いた話はより具体的でしたので、こちらからも気づいてないかもしれないけど20周年ということを伝えつつ、その後の打合せを重ねて、9月に『あぶない刑事』から配信アルバム

ミュージックファイルシリーズ
特設サイト
http://www.vap.co.jp/musicfile/



9月19日よりiTunes、レコチョク他で順次配信開始

伝説のアクションドラマ音楽全集
『あぶない刑事MUSIC FILE-Digital Edition-』



10/24 松竹音楽出版よりCD2枚同時発売

『必殺誕生40周年 映画 必殺! 厳選 ミュージックファイルVol.1』
『必殺誕生40周年 映画 必殺! 厳選 ミュージックファイルVol.2』

10/31 日本コロムビアよりCD10枚組発売 『菊池俊輔 作曲50周年 CD-BOX』
をリリースする運びになり、ようやく新たなスタートラインに立ちました。
 偶然が重なり、この10月にもバップ以外の会社でも、ミュージックファイル関連

のCDのリリースもあります。詳細は四角の枠をご覧下さい。これから何が出来るのか…。
(高島幹雄=パッケージクリエイター)



手塚治虫『三つ目がとおる』好評発売中!
発行:小学館クリエイティブ 発売:小学館
定価:第1巻/第2巻1,500円、第3巻~10巻1,680円(税込)全10巻

▼先史時代に偉大な文明を築いた三つ目族の子孫で不思議な力を持つ少年・写楽保介が、古代史にまつわる難事件に立ち向かう、ミステリータッチのSFで著者の代表作のひとつが、雑誌発表順に、掲載時の扉、カラーページも初めて再現した決定版で蘇る。
▼中学2年生の写楽保介は、いつも額に大きなバンソウコウを貼っているときは、まるで幼い子どものように純真だが、ひとたびバンソウコウがはがれると、その下から第三の目があらわれて、たちまち、恐ろしい超能力を発揮する悪魔のような三つ目人になる。クラスメートの男まさりな女の子・和登千代子とともに、古代遺跡や財宝にからむ謎に次々と巻きこまれていく。
▼全10巻完結。全巻購入者には著者サイン入り万年筆プレゼント。
問合せ:小学館クリエイティブ(担当:山田)03-3288-1354 http://www.shogakukan-cr.jp/mitsume/

てりとりぃ×宇野亜喜良
コラボレーショングッズ 第1弾
「月刊てりとりぃ」創刊2周年を記念した「てりとりぃ」オリジナルTシャツ&エコバッグを制作しました。(左写真をクリックすると別画像が表示されます)。枚数に限りがありますのでご注文はお早めに!

■Tシャツ サイズ:S、M(アメリカンサイズにつき「M」でも比較的ゆったりサイズです)/カラー:ホワイトのみ/素材:綿/価格:2,800円(税込)+送料
■エコバッグ サイズ:縦375mm×横350mm(アナログLPも入ります)/カラー:オフホワイトのみ/価格:1,200円(税込)+送料

ご購入を希望される方は、「てりとりぃ」編集部 territory.tvage@gmail.com まで、メールにて希望商品名と希望サイズ、枚数をお知らせ下さい。到着後3日以内に折り返し返信メールを送ります。なお限定品につき品切の場合はご購入出来ない場合があります。*別途送料は発送方法によって異なります。詳しくはお問い合わせ下さい。

2012年7月13日(金)

歌はいかがですか 【二〇一二年 文月】
[山上路夫 × 村井邦彦 × 日向大介 × 宇野亜喜良]








金管と転調の魔術師・冨田勲

 アニソン(「特撮を含む」)には浮き浮きさせてくれる魔力がある。まずは冨田勲である。冨田の曲は他のどの作曲家の曲とも違う。スケール感が違うのだ。とにかく壮大である。最も有名な曲では「ジャングル大帝」があるが、イントロだけで目の前にアフリカの大自然が開けてくるよう。そしてめくるめく転調、息をもつ

けない展開だ。イントロの快感は、さらに「マイティジャック」で頂点に達する。胸躍るとはまさにこのこと。この2曲に共通するのはイントロの金管である。冨田の金管の使い方はまさに神技だ。金管の使い方がうまいと言えばワーグナーだが、シンセの時とは違ってアニソンを作る時の冨田は曲を3分でまとめ、その短い時

間を寸分なくドラマティックに仕上げるので、曲がひたすら長いワーグナーよりも遥かに上だ。
 劇場長編「ガリバーの宇宙旅行」の「ガリバー号マーチ」もイントロのストリングスに呼応する金管が心地よい。曲が始まると、上昇気流に乗ったような高揚感のあるメロディが最高だ。そして「キャプテンウルトラ」。やはり切り裂くような金管から始まるが、サウンドを含め曲全体の緊張感が素晴らしい。どこまでも上昇していくような曲想、どうしたらこのような曲が思いつくのだろうか。流麗という点では「リボンの騎士」が頂点だ。特にレコード用の「王子編」がベスト。転調、めまぐるしく変わるリズム、そして心地いいフックがあり、ヨーロッパ的なお洒落さもある。他のどの作曲家もこのような曲は

作れないだろう。ちなみに押尾コータローは1STアルバムでこの曲のカバーを披露しているが、ギター1本とは思えないセンスの良さが溢れていてこれも必聴。
 転調といえば一番古い曲でNHKの人形劇「宇宙船シリカ」がある。転調に次ぐ転調、ごく短い曲ながら既にポップでセンスの良さが溢れている。続く人形劇「銀河少年隊」も素晴らしい。トニー・マコウレイが言っていた「一番大事な頭の8小節」がキャッチーなので、それだけで幸せな気持ちになれる。その他では「ジャングル大帝」「リボンの騎士」は贅沢にプレスコで録音されていながら挿入曲に名曲が多く、特に「星になったママ」「タマゴの赤ちゃん」「フランツのワルツ」を聴くと劇中で1回しか使わないのがあまりに惜しい。また、山田太

郎が歌いAメロが歌謡曲っぽい「戦え!オスパー」にはサビで解放感溢れるメロディが登場、「ビッグX」にも心地いい一瞬のフックがある。コミカルな「どろろ」は、サウンドの緊張感が聴きもの。劇場長編の「アラビアンナイト・シンドバッドの冒険」は「行こうよみんなのうた」と「ひとりぼっちの姫のうた」が何ともエキゾチック。美しいサミール姫が歌った冨田ならではの転調を駆使した後者、そのインストがずっと後に「魔女っ子メグちゃん」でさりげなく1回使われた。「マジンガーZ」の戦闘シーンで伊福部昭の「わんぱく王子の大蛇退治」の大蛇退治の1曲(「地球防衛軍」の曲)を登場させたり、昔の東映動画は劇伴のチョイスが面白い。
(佐野邦彦=VANDA編集人)



ウチの本棚
[不定期リレー・コラム]第5回:加藤義彦の本棚

 本棚は、持ち主の心を映す鏡。そんな格言があるかどうかは知らないが、あながち的外れではないようだ。
 大学を卒業して会社員になり、自分で金を稼ぎ始めた。すると、それまで抑えられていた物欲が暴走し、前から探していた本を買い漁るようになった。ぼくの部屋にある壁四面のうち、一面はすべて棚で、天井ま

で六段ある棚のほとんどが、買い集めた本で埋められた。
 子どものころから飽きっぽく、昔から読書は乱読派である。書棚に並べられた大量の本も、節操がないほどジャンルはバラバラだったが、30歳になったある日、ふと書棚をながめて驚いた。一見、何のつながりもない本たちだが、そこに「笑い」という共通点があることに

気づいたのだ。筒井康隆、深沢七郎、テディ片岡、ルイス・キャロル、ジョン・アーヴィング、ボルヘス。確かにどの著者の文章にもユーモアがある。そうか、ぼくは笑うことが好きなのか。そこに笑いを求めて、読書しているんだ。そう本たちに教えられた。
 その後、本を収納する場所が足りなくなり、決断を下した。書棚に収まるぶんだけの本を残し、そのほかの本は売却したのである。その際、手元に残した本の多くは「笑い」に関するもので、大半が洋書だった。
 学生時代は勉強嫌いだったが、英語だけは熱心に取り組んだ。前から興味があった、欧米の文化を理解したかったからである。だが当時は、まだインターネットもなく、洋書を買うにもひと苦労。新刊本は、少し割高だったが、今は亡き銀

座のイエナ書店で購入した。だが古本は身近な店に置いておらず、米国はハリウッドにあるラリー・エドモンズ書店に「欲しい本」のリストを作って郵送し、通信販売で買った。本が届くまで2ケ月かかったが、待つことの楽しさを味わえた。
 ハーポ・マルクス、ジェリー・ルイス、アーニー・コヴァックスほか伝説のコメディアンが書いた自伝本。

ローレル&ハーディ(極楽コンビ)主演の喜劇映画や、BBC制作のコント番組『モンティパイソン』などの研究本。いずれも若いころに、辞書を片手に愛読した洋書である。なかでも大切にしているのが、米国の人気バラエティ番組『サタデー・ナイト・ライブ』のコント台本集だ。先ほどのラリー・エドモンズ書店から、32年前に3500円で買ったのだが、今調べたら、米国のアマゾンでも売っていた。値段は、たったの160円!しかも1クリックで買えるのだから、便利な世の中になった。
 欲しい洋書を手に入れるには手間も時間もかかった、あの時代。あの不便だが心豊かだった時代が、書棚に並んだ本たちを見るたびに、いつも懐かしく想い出される。
(加藤義彦=文筆家)





Bibliothèque文明講座特別企画 宇野亜喜良スペシャルトークショー 「ぼくとサヴィニャック」

Bibliothèqueパリ祭 vol.1 「パリに恋し、パリを笑顔にした レイモン・サヴィニャック展」のスペシャルイベントとして、日本屈指のイラストレーターである宇野亜喜良さんをお招きし、サヴィニャックの作品の魅力と、世界のポスターデザインに与えた影響などをおうかがいします。聞き手には、サヴィニャックと親交があり、本展にご協力いただいているギィ・アンティーク・ギャラリーオーナーの山下純弘さん。時代を牽引し続けるアーティストは、不遇の時を経て生涯現役で活躍したサヴィニャックを、どうとらえているのか。必見のトークショーです!

聞き手:山下純弘(ギィ・アンティーク・ギャラリー) 
日時:2012年7月21日(土)/15:00〜17:00(14:30開場)
会 場:Bibliothèque(ビブリオテック)
参加費:1,800円(当日精算)
予約制:電話または、メール(biblio@superedition.co.jp)にて。
●メール受付:件名「宇野亜喜良トーク希望」にて、お名前・電話番号・参加人数をお知らせ下さい。おって返信メールで予約完了をお知らせいたします。●電話受付:Tel.03-3408-9482
(火〜土曜 12:00〜20:00/日、祝日 12:00〜19:00) ※定員70名に達し次第、受付を終了させていただきます。



2012年6月1日(金)

歌はいかがですか 【二〇一二年 水無月】
[山上路夫 × 村井邦彦 × 日向大介 × 宇野亜喜良]








仕事はよろず 引き受けましょう。大小遠近 国籍問わず。委細面談 叩き屋稼業。
在仏ブラジル人打楽器奏者 エヂムンド・カルネイロ インタビュー

 古くからブラジル音楽が広く好まれてきたフランスへは、これまでにも数多くのブラジルの音楽家が移住したり長期滞在して、活動してきた。バーデン・パウエル然り、タニア・マリア然り。最近も、フラヴィア・コエーリョというカリオカ女性歌手がパリでアルバム・デビューを果たしている。
 近年、そのタニア・マリアのバンド・メンバーとし

て活躍している打楽器奏者エヂムンド・カルネイロも、現在、パリで活躍するブラジル人音楽家だ。
 サンパウロ州のマカウバウというところで生まれたエヂムンドは、ブラジル本国では80年代に、カンピーナス市やサンパウロ市で活動。アナ・ヂ・オランダや、一時タンバ・トリオのメンバーだったこともあるマエストロ、ラエルシオ・ヂ・フレイタスなどと共演して

いる。
「ラエルシオ・ヂ・フレイタスのビッグバンドで演奏していたときは、世界中の音楽と出会う機会が多かった。アート・ブレイキーとか、前衛ヴァイオリン奏者のローリー・アンダーソンとかね。アンダーソンにビリンバウを教えたのも楽しい経験だったよ」
 これらの活動が、エヂムンドが広く世界に目を向けるきっかけになった。
「次第に私は、音楽は〝世界共通語〟なんだと考えるようになった。日々、いろんな発見をする中で、どんどん新しいものを自分の音楽に取り入れて、もっとユニバースな音楽を作っていきたいと思うようになったんだ」
 88年、パリへ旅立ったエヂムンドはアルチュール・アッシュや、アルチュールの父で俳優でもあるジャッ

ク・イジュランなどのレコーディングに参加する傍ら、台頭しはじめていたクラブ・ミュージック・シーンとも交流を持つようになる。エレクトリック・ミュージックとの出会いは、当時〝アブストラクト・ヒップホップ〟とか〝トリップホップ〟と呼ばれていたサウンドを提示していたオラーノ(写真右は96年のアルバム「オラーノ」。LIOの妹エレナ・ノゲラも参加!)での演奏だった。
「今では珍しくないけれど、私が演奏したビリンバウの音がサンプラーで繰り返されていくのが当時はとても

面白かった。それからはボブ・シンクレアやサンジェルマン、ゴタン・プロジェクトのフィリップ・コーエン・ソラルなど、DJやトラックメイカー達とも仕事をするようになったんだ」
 そんなエヂムンドの最新ソロ・アルバム「ザ・ハンズ」(写真左/トゥピ・レコーズにて配信中)は、まさに彼の目指すとおりユニバースな作品だ。
「例えば〝タンボーリス〟という曲は、ハービー・ハンコックのアレンジも手がけているピアニスト、クラウス・ミューラーと一緒にニューヨークで作った曲。

曲自体はジャズだけど、ブラジルに伝わるいろいろなリズムを使っている」
 マラカトゥと呼ばれる、ペルナンブッコ州を中心に伝わる音楽や、ビリンバウの音、サンバのリズムなど、ブラジル各地のリズムを混在させた作りもまた、国外からブラジルを俯瞰して見ているエヂムンドらしい。国外に出たことで、より、自身のルーツに自覚的になったという。
「もちろんカンピーナスにいた頃から自分のルーツであるアフロ・ブラジル文化には常に意識的だったし、商業的な音楽活動だけでなく、カンドンブレー(※アフリカ文化に起源を持つ宗教)の儀式でも打楽器の演奏を受け持っていた。オーセンティックな演奏を、私は常に大切にしている。
 しかし、ミュージシャンとして現代的な音楽や世界

中の音楽のミックスを目指せば目指すほど、その意識はさらに強くなった。自分ならではの音楽としてミックスした音楽をきちんと作るためには、自分自身のルーツを確固たるものにしておかなければならない。土台がしっかりしていないといろいろなものをミックスしていくと、土台が見えなくなってしまうからね」
 土台を確立しているからこそ、どんなサウンドとのミクスチャーも受けて立つことができるし、ユニークなコラボレーションを楽しむ余裕が生まれる、ということだろう。

 一時、パリで活動していた時から親しくしていたというセウ・ジョルジのアルバム「クルー」(写真上/04年作/日本盤はオーマガトキから発売)の冒頭の曲〝チーヴィ・ハザォン〟にも、そんなエヂムンドらしさが刻まれている。
「とても大事な曲だからぜひ参加して欲しいと言われたんだ。ベーシックな部分は私のパーカッションと、フランスのギタリスト、マチュー・シェディッドとで作ったんだ。サンバがベースにはなっているけどサンバ、サンバしないで、ファンキーな感じにしたいね、という意向がこの曲には生かされているんだ。これからも、自分のルーツを大切にしながら、現代的で裾野の広い、私にしかできない音楽を作って行きたいと思っている」
(取材/文=麻生雅人)



少年の歌、私小説R&B~清水翔太



清水翔太『Naturally』
 1. Get Back 2. The Day 3. 君さえいれば w/小田和正 4. Gamble 5. love 6. Overflow 7. your song 8. 冬が終わる前に 9. Picture Perfect 10. Only me, Only you 11. Tonight 12. マダオワラナイ/初回限定盤は5曲入りDVD付
 清水翔太の歌が好きだ。車ではヘビロテ、仕事中もつい口ずさむほど身体に馴染み、ライブにも毎年数回は足を運ぶ。彼の歌は僕にとって、年の離れた友達のようだ。
 初めて耳にしたのはフィリー風のミディアム哀愁チューン「アイシテル」で、2番のサビ前で強烈なフェ

イクをかます彼のヴォーカルに圧倒された。他にも90年代ソウル・テイストの個人的ベスト曲「Soulmate」、艶っぽいブルース「LOVINーU」など19歳とは思えぬ音楽的才能に驚かされた。以降もラテン・フレーバーの「flower」、躍動感溢れるジャズ・ファンク「Midn

ight Flight」や50年代ガールグループ風の「CREAM」、珍しく官能的な詞とヴォーカルの「So Good」、オートチューンを介した変則バラード「Winter Love Song」など、いいメロディー揃いかつ魅力的な声なのだ。
 今年3月にリリースされた4枚目のアルバム『Naturally』はクラシックなソウルマナーに忠実かつアーバンに展開した、ブラック・ミュージックへの思いを貫かんとする決意表明のようなアルバムだ。ホーンが軽快なブギー⑨、4ビートジャズ⑩、うねるようなハチロクのロッカバラード②」、ニューソウル・タッチのエモーショナルな⑥、ニュージャックスウィングの①⑫etc……
 日本のR&Bはダンス・チューンか性愛モノ、バラ

ードが主流で、水っぽさと背中合わせだが、清水翔太はこのジャンルでは珍しく、パーソナルな出来事を叙述的に歌うシンガー・ソングライターだ。故郷を離れ新しい世界に旅立つ少年の思いを歌うデビュー曲「HOME」にはじまり、回想と前向きな決意が入り混じる「My Treasure」、ピュアな友情を歌う「Soulmate」など初期作品はどれも少年の歌だ。美しい日本語で綴られた10代の恋、悩み、希望は、あくまで個人的な心情として歌われ、それが年齢と共に青年の心情へと成長している。彼の歌はR&Bでは珍しい「私小説」なのだ。その世界は聴き手である自分自身が通過してきた青春であり、今の自分にも通じる普遍的な心情である。尾崎豊の「Forget-me-not」のカバーも、尾崎もまた

「少年の私小説」だったことを思うと、同じソニー所属という以上に清水翔太自身が思いを馳せたのも納得。『Naturally』のトップチューン①では「傘をさすのも/旅をするのも/カラフルに彩るのもいいけど」と、過去3枚のアルバム名を歌詞に登場させ、「時間をかけて今やっと/真実が見えてきた」と等身大の、22歳の今を歌う。歌い手の個人的な物語が聴き手の感情とシンクロするのが私小説系アーティストの醍醐味だ。いつかダニー・ハザウェイやカーティス・メイフィールドのようなアーティストに成長してくれるだろうか。心地よいグルーヴに身を委ねながら、彼の私小説=ソウル(魂)をずっと聴いていたい。これから先も。
(馬飼野元宏=「映画秘宝」編集部)



由紀さおりカヴァー・アルバム復刻企画、全8タイトル一挙発売!



「こんなにも素敵な声で私の曲を歌っていただけることは大きな喜び」フランシス・レイ

ピンク・マルティーニとの共演盤『1969』で世界中を熱狂させた由紀さおり。これまでに彼女が発表した数多くのアルバムのなかから、70年代を中心に発表されたカヴァー・アルバム群が一挙に復刻発売。いずれもこれが初CD化の名作揃いで、とりわけ注目に値するのがフランシス・レイが由紀さおりのために書いた楽曲を収録した『この愛を永遠に』『男のこころ~由紀さおり フランシス・レイを歌う』。前者には山上路夫=渋谷毅による隠れた名曲「朝食」を収録。お薦めです!

『由紀さおりの美しき世界』(69年)/『あなたと夜と音楽と~由紀さおりの魅力』(70年)/『この愛を永遠に』(71年)/『男のこころ~由紀さおり フランシス・レイを歌う』(71年)/『故郷~由紀さおり ビッグ・ヒットを歌う』(72年)/『恋文』(73年)/『みち潮』(74年)/『う・ふ・ふ~由紀さおり 宇崎竜童を歌う』(77年)

5月30日発売/各2,500円(税込) 由紀さおりオフィシャルサイト http://www.emimusic.jp/pmsy1969/