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2014年9月5日(金)

ヒトコト劇場 #47
[桜井順×古川タク]








特集「Le monde enchanté de Jacques Demy」[2]
ジャック・ドゥミ ~映画的な人生、人生の映画

 ジャック・ドゥミの映画作品は、文学、映画、美術といった様々な芸術作品へのオマージュと、自らの実人生の痛々しいまでの投影によって成立している。このことはドゥミ作品を論ずるひとつの視点に過ぎないが、極めて重要なファクターと言える。
 たとえば、カトリーヌ・ドヌーヴ&フランソワーズ・ドルレアック扮する双児

姉妹が港町を舞台に歌い踊る『ロシュフォールの恋人たち』。そこにはハワード・ホークスの53年作『紳士は金髪がお好き』で妖艶に歌い踊るマリリン・モンロー&ジェーン・ラッセル扮する二人のショウ・ガールの影響を見ることが容易であろうし、古くはD・W・グリフィスの21年作『嵐の孤児』に登場する悲劇の美人姉妹リリアン・ギッシュ

&ドロシー・ギッシュの姿を、絵画に眼を移せばピエール=オーギュスト・ルノワールの『読書する二人の少女』にその原型を見ることが可能である。それら美術・演出面での巧妙な引用の一方、物語・人物像には、若き日のドゥミ自身が抱いた夢と痛切な苛立ちが込められている。「一生ダンス教師で過ごすのはイヤ/パリでチャンスを生かしたい

わ/時間を空費したくないの」。ドヌーヴ演じる双児姉妹の妹デルフィーヌが大鏡の前で歌いあげるそのリリックは、父親の意向で通わされた職業訓練学校で不遇をかこつドゥミ自身の青年期の心情そのものである。
 ドゥミの故郷、ナントを舞台にした長編第一作『ローラ』に登場するローラン・カサールの人物像は、その意味でドゥミそのものと言っていい。「人も街も田舎も、うんざりだ」「ここじゃ誰も生き方を知らない」。そうひとりごつ夢見がちな青年カサールは、職を失い、再会した初恋の人=アヌーク・エーメ扮する子連れの踊り子ローラにもふられ、失意のうちにナントを旅立つ。自らが抱く漠然とした夢と、成功への仄かな灯りを求めて突き進むカサール。故郷ナントからパリを目指したドゥミの心情も、

あるいはそうでなかったか。半自伝的作品と言える本作も、物語の細部や骨格をマックス・オフュルス、ロベール・ブレッソン、アンドレ・マルローといった芸術家の作品からの引用とオマージュで埋め尽くすのがドゥミの流儀だ。
 カサールはその後、ドゥミ畢生の名作『シェルブールの雨傘』に、成功を収めた宝石商として再登場する。カサールは雨傘屋の娘、ドヌーヴ扮する美しきジュヌヴィエーヴに求婚。兵役にとられた恋人ギイの子をその身に宿していたジュヌヴィエーヴも、カサールの熱意に押されるかたちで結婚を決意する。
 『ローラ』に登場するローラと、『シェルブールの雨傘』に登場するジュヌヴィエーヴに共通するもの。それは、相貌の美しさということもさることながら、

どちらも子連れと言う部分に大きなポイントがある。他の男の「子供」を宿した女性を愛し生涯の伴侶として迎え入れる、超越的・略奪的とも言える激しい愛情。カサールの心の有り様は、子連れの女性映画監督アニエス・ヴァルダを妻として迎え入れたドゥミ自身の実人生と完全に一致している。
 映画『シェルブールの雨傘』では、そのドゥミ自身の実人生が「生々しく」「痛々しい」かたちで刻印

されている。カサールと結婚したジュヌヴィエーヴが6年振りに故郷に戻った雪の日に、昔の恋人ギイと偶然に再会する場面がそれだ。ギイの経営するガソリンスタンドに滑り込むジュヌヴィエーヴの車の中には彼ら二人の落とし子、フランソワーズのはしゃぐ姿がある。この幼子に扮するのはロザリー・ヴァルダ、つまりアニエスの「連れ子」その人である。ドゥミはここで、戦争が引き離した悲運のラヴ・ストーリーを描きながらも、他方にある現実的な幸福=子連れの女性をその身のうちに迎え入れた自身の実人生を荒々しく描き出しているのだ。このことは『シェルブール』の1年前に封切られた、妻アニエスの代表作『5時から7時までのクレオ』において、ロザリー・ヴァルダの実父であるアントワーヌ・ブルセ

イエが、死の恐怖に苛まれる主人公の心を癒す休暇兵役を実名で演じていることと考え合わせると一層興味深い。成長したロザリーは後にドゥミ、ヴァルダ作品をはじめとするヌーヴェルヴァーグ派晩年の衣装デザイナーとして活躍。二人の庇護の下、幸福な人生を歩んだのは周知の通りだ。
 文頭に書いた命題を言い換えれば、ドゥミの映画はフィクションの体裁を借りた、荒々しいまでの深層的ノンフィクション作品である。現在行われている回顧展もこの視点を考慮することによって、ある種の定説とは異なるシュールで倒錯的なドゥミの一面を観ることも可能だろう。ここ日本でも再評価の声高まるドゥミ作品の真価を問う新楽章は今始まったばかりである。
(関根敏也=リヴル・アンシャンテ)

企画展『ジャック・ドゥミ映画/音楽の魅惑』

会場:東京国立近代美術館フィルムセンター展示室(企画展)
会期:2014年8月28日(木)〜12月14日(日)
詳細⇒http://www.momat.go.jp/FC/demy/index.html

特集上映『ジャック・ドゥミ、映画の夢』
会場:アンスティチュ・フランセ東京
会期:2014年9月13日(土)〜9月26日(金)
詳細⇒http://www.institutfrancais.jp/tokyo/events-manager/cinema1409130926/




イギリスのジャズ・ヴォーカリスト、ノーマ・ウィンストン待望の初来日


 イギリス、ロンドン生まれのジャズ・ヴォーカリスト、ノーマ・ウィンストンが来日する。なんと今回が初来日ということで、「一

度も来たことがなかったのか?」と少しびっくり。ノーマ・ウィンストンといえば、マイケル・ガーリック、マイク・ウェストブルック、

イアン・カーのニュークリスなど、1970年代のブリティッシュ・ジャズ・ロックの代表作に参加、いわゆるヴォーカリゼーションの使い手として、ジャズ・ファンというよりも、プログロッシブ・ロック、特にカンタベリー・ロック・ファンの間では知られた存在だ。
 また近年はジャイルズ・ピーターソンがコンピレーションに彼女が参加している楽曲を入れたり、70年代の代表曲を集めた編集盤がリリースされたりと、クラブ・ジャズ・シーンを中心に再評価が目覚ましい。しかし、そんな流れはどこ吹く風、彼女は独自の道を進んでいる。03年からはクラシックとジャズの両ジャンルで活動するイタリアのピアニスト、グラウコ・ヴェニエル、ドイツのクラリネット、サックス・プレイヤ

ー、クラウス・ゲジングの2人とグループを結成、今年の初めに出た最新作「ダンス・ウィズアウト・アンサー」(ECM)を含めて、これまでに4枚のアルバムをリリースしている。彼女の魅力はその美しく静謐な声の素晴らしさはもちろんだが、作詞家としても大変な才能の持ち主だ。インスト曲として知られたミュージシャンのオリジナル楽曲に歌詞をつけ、新たな魅力を引き出している。
 もともと87年にリリースされたECMからの初リーダー作「サムホエア・コールド・ホーム」で、エグベルト・ジスモンチの「カフェ」やラルフ・タウナ―の「セレステ」に歌詞を付けて歌ったのをきっかけに、03年にはフレッド・ハーシュの楽曲を取り上げた「ソングス&ララバイズ」(サニーサイド)をリリース。

グラウコ&クラウスとのトリオになってからは、2人のオリジナルの他、ヒューベルト・ナス、マリア・シュナイダー、ラルフ・タウナ―、ウェイン・ショーターなど、硬派なジャズ・ファンが「オッ!」と反応するミュージシャンたちの楽曲に歌詞を付けている。またカバーする楽曲も秀逸だ。
 スタンダード以外に、ピーター・ゲイブリエルの「ヒア・カムズ・ザ・フラッド」、トム・ウェイツの「サンディエゴ・セレナーデ」、最新作では「リヴ・トゥ・テル」(マドンナ)、「イット・マイト・ビー・ユー」(デイヴ・グル―シン)、「タイム・トゥ・ノー・リプライ」(ニック・ドレイク)、「エブリバディズ・トーキン」(二ルソン)と、ロック&ポップス・ナンバーを多く取り上げている。どれもオリジナル

とは全く違った雰囲気でとても魅力的だ。「コンテンポラリー・ジャズの栄光の一つ」(イギリス JazzJounal誌)、「今、彼女は自身の頂点にいる。イギリスでは及ぶ者は誰もいない」(イギリス Alyn Shipton、Times、London)など、イギリス本国で最大級の賛辞を受けるジャズ・シンガーがグラウコ・ヴェニエル、クラウス・ゲジングと共に待望の初来日、この秋、彼女の声に酔いしれたい。
(土屋光弘=ラジオ番組制作者)
●ノーマ・ウィンストン ウィンストン/ゲジング/ヴェニエル トリオ 公演 詳細はこちらにて




2014年6月13日(金)

国産イージーの企画編集盤「ラブサウンズ・スタイル」の新作が、10年振りに発売決定!!

 「ラブサウンズ・スタイル」シリーズは、レコード会社各社に残された膨大なカタログのなかから、主に60~70年代にかけて制作された、国内録音によるイージーリスニング・アルバムより選曲・構成した作品集で、2004年に複数のレコード会社から全6タイトルが発売されたものだ。

 それから10年を経て、今回はキングレコードに残された膨大なカタログのなかから、カテゴリごとに構成した5タイトル(各盤20曲、合計100曲)が発売されることになった。
 60~70年代は、こうしたインストゥルメンタルやイージーリスニング・ヴォーカルの企画盤が定期的に制

作されており、そこでは映画音楽や海外のポピュラー・ヒットの数々が洒脱なアレンジを用いて数多くカヴァーされていた。時期的にステレオ装置の一般家庭への普及と重なることから、それらはリスナーに好意的に受け入れられ、常に安定したセールスを記録していたという。とりわけサックス、ピアノ、ギターなどの楽器をフィーチャーした作品が人気を博し、由紀さおりの「夜明けのスキャット」のヒット以降は、スキャットを意欲的に採用したアルバムが多数制作された。
 ところが、そのあまりに膨大なタイトル数から、再編に着手するのが困難で、さらに極めて匿名性の高いアーティスト表記などからも、これらが顧みられる機会はなかなか訪れなかった。現に、本シリーズに収録された楽曲の大半が初CD化

となるものだ。
 戦後日本で紹介されたムード音楽のレコード第1号は、日本コロムビアの45年12月新譜として紹介されたアンドレ・コステラネッツ管弦楽団の「ビギン・ザ・ビギン/眼に這入った煙(煙が目にしみる)」と云われ、それ以降、60年代から70年代にかけて、ムード音楽、イージーリスニング・ブームはより大きく華開いた。とりわけ〝人類の進歩と調和〟をスローガンに様々な企画が実現された万博ムード真っ盛りの時期には、国内外のオーケストラ公演が盛況で、これは同時に米ビルボード誌に〝イージーリスニング・チャート〟が設けられておよそ10年という第2次イージーリスニング・ブーム到来を告げる時期に符合し、引いてはポピュラー音楽界における転換期でもあった。

 69年11月のポール・モーリア初来日に続いて、翌年11月にはイージーリスニング界の本命と目されたフランク・プゥルセルが来日。キョードー東京などは、こうした傾向を指して〝ビューティフル・サウンド〟もしくは〝ラヴ・サウンド〟といった呼称を使い独自の展開を打ち出し、この分野をさらなる隆盛へと導いた。

ちなみにその〝ビューティフル・サウンド〟第1弾として招聘されたのが、数多くの映画で名曲を書いたフランシス・レイである。
 やがてブームは定着するが、90年代に入ると、これらはエレベーターミュージック、ラウンジ・ミュージックといった観点から新たなスポットが当てられ、往年の映画音楽と共に若い層の人気を集める。とりわけミシェル・ルグランやヘンリー・マンシーニ、イタリアのアルマンド・トロヴァヨーリらの作品は、これまで国内未紹介だった隠れた作品までもが世界に先駆けてCD化、外資系CDショップを中心に人気が拡散することでより多くのリスナーの心を掴んだのである。
 2000年代に入るとこれらイージーリスニングのオーケストラ演奏が韓流ドラマの劇中で採用されたこ

とで、往年のファンの心をも揺さぶり、今やブーム再燃の兆しが見える。人気の理由は様々だが、豪華で流麗なオーケストラ演奏とシンプルながら覚えやすいメロディ、そしてそれを倍加させる洒脱なアレンジ、それらが渾然一体となった名匠の技が堪能出来る点が最大の要因だろう。
 今回発売されるタイトルは「イージーリスニング篇」「ポップス篇」「映画音楽篇」「バカラック作品集」「フランシス・レイ作品集」の5作。アートディレクションを本誌同人の宇野亜喜良氏が手掛け、写真はその昔、宇野氏と広告分野でタッグを組んでいた故・藤井秀樹氏の作品を採用、数十年ぶりのコラボが実現している。なお企画・監修は筆者が務めた。
(濱田高志=アンソロジスト)
*「LOVE SOUNDS STYLE」シリーズ5作はキングレコードより6/18に一挙発売(各タイトル2,400円+税)。



中村桂子・和田誠「生き物が見る私たち」(青土社刊)


 生物や科学というと、文系の人にとっては、敬遠してきたジャンルではなかろうか。かくいう私もガチガチの文系で、高校での授業ですでに挫折し、赤点ギリギリで卒業した類いだ。無論、人類の起源や遺伝子など、興味はあるのだが、記号が出てきただけで、アレルギー。結局、これまでその手の本をあまり読まずに来てしまった。私に限らず、そんな文系諸氏は意外と多

いのでは。
 そんな生物・科学アレルギーのあなたに、中村桂子・和田誠の「生き物が見る私たち」は絶好の書だろう。同書は2003年から1年間、集英社の雑誌「青春と読書」に連載されたお二人の対談をまとめたものに、クローンやゲノムなど近年の新しい話題もコラムとして追加した書だ。中村桂子は、東大出身の理学博士で、JT生命誌研究館という企

業博物館の館長でもある。一方、イラストレイターの和田誠は、本書をより判り易く伝えるイラストレーションを提供するとともに、文系の代表者として彼女に素朴な疑問を投げかけるサポート役を務めている。
 この「生命誌」という耳慣れない言葉、英語ではバイオヒストリー(Biohistory)と呼ばれ、生命の歴史物語を読み取る新しい学問のことだそうだ。全ての生き物がDNAとして、それぞれの体内に38億年の歴史を持っている。その歴史物語を読み解いて、生命・人間・自然を知り、それらを大切にする社会づくりにつなげていくということを提唱しており、本書でもそれが一貫したテーマとして示されている。
 また、同書は対談形式をとっているので、私のような門外漢にも非常に読み易

い。しかも、聞き手の和田誠が例示してくれる映画や音楽の話が絶妙で、彼のシンプルで親しみやすいイラストレーションと相まって、より身近に感じさせてくれる。その結果、以下の新たな事実を学んだ。まずは、女性と男性の生命力の話。そもそも、子供を産むから女性は肉体的に頑強に出来ていると言われているが、それは遺伝学上正しい根拠が示されていること。また、地域別のオサムシのDNAの違いは、その分布図と地形変動の位置が合致していることなどなど。正に目から鱗が落ちることばかりで、学生時の授業とは違い、すぅ~っと頭に入る。もし可能ならこれに続いて、私の不得手な金融や経済に関する対談集も是非、出して欲しいと思うばかりである。
(星 健一=会社員)



アウトバーンがジャズ・スタンダードになる日


 「週刊てりとりぃ」の楽しみの一つといえば、大久達朗氏のセレクトする「てりとりぃ放送局」。「アーティスト」「楽曲」「楽器」「奏法」などなど、様々な視点から選曲、「音楽との新しい出会い」を与えてくれる。そこで今回は、「てりとりぃ放送局」を「リスペクト」してこんなお話を。
 アルバムを聴く楽しみの一つが「カヴァー曲探し」。特に自分の思い入れのある楽曲がカヴァーされていると「アンタ、わかってるねぇ」なんて一人でニヤニヤしたりする。ただし楽曲の出来があまり好きじゃないときのガッカリ感は半端ない。いつも「カヴァー曲」を聴くときには、そんな期待と不安を感じながら耳を傾ける。ところで「クラフトワーク」といえば、ドイツが生んだ偉大な「ゴッド・オブ・テクノ・ポップ」

だ。「アウトバーン」「ヨーロッパ特急」「モデル」「ポケット・カリキュレーター」など、多くの楽曲が様々なアーティストたちにカヴァーされている。最近では、昨年リリースされた細野晴臣氏のアルバム「ヘヴンリー・ミュージック」で、彼らの「放射能」がカヴァーされていた。
 テクノ・アーティストやDJ達が彼らの楽曲を取り上げるのは、「さもありなん」といった感じで、特に大きな驚きは感じないが、2000年以降、彼らの楽曲を取り上げるジャズ・ミュージシャンたち増えている。これが実に不思議な出来栄えで面白い。

 少し紹介しよう。スウェーデンのジャズ・グループ、oddjoj(オッドジョブ)が03年にリリースしたアルバム「KOYO(コーヨー)」では、クラフトワークの「マン・マシーン」をカヴァー。オッドジョブはベースのペーテル・フォルシュ、サックスのペール・ヨハンセン、トランペット・のヨーラス・カイフェス、ピアノのダニエル・カールソン、ドラムスのヤンネ・ロベルトソンの5人。ミディアム・スローの幻想的な雰囲気の中、サックスとトランペットが「マン・マシーン~♪」とメロディを奏でる。60年代マイルス・クインテットのようなク

ールなサウンドが印象的。ドイツ出身のピアニスト、ウォルター・ラングのユニット、TRIO ELFの08年のアルバム「746」では、同じ「マン・マシーン」をピアノ・トリオでカヴァー。またオッドジョブと同じくスウェーデン出身で、日本でも人気のピアニスト、ヤン・ラングレン・トリオによる09年のアルバム「ヨーロピアン・スタンダード」では「コンピューター・ラブ」を16ビートで演奏、後半は手拍子が入り、とてもファンキーにまとめている。ドイツ出身のDJ/プロデューサー/ドラマー、クリスチャン・プロマーのユニット、クリスチャン・プロマーズ・ドラムレッスンの07年のアルバム「ドラム・レッスンVOL・1」では「ヨーロッパ特急」をラテン・ジャズ・スタイルで。そして11年には

スイスのジャズ・カルテット、MenschMaschineによる全曲、クラフトワークのナンバーをカヴァーしたアルバム「Hand Werk」がリリース、「ロボット」「モデル」といった名曲が、70年代のスピリチュアル・ジャズ風に演奏されている。
 そういえばクラフトワークは、昨年7月にスイスで行われたモントルー・ジャズ・フェスティバルに出演、喝采を浴びたそうだ。「アウトバーン」がジャズ・スタンダードとなる日は近い。
(土屋光弘=ラジオ番組制作者)



Espace Biblio+月刊てりとりぃ共同企画
手塚治虫「フィルムは生きている」(国書刊行会刊)刊行記念

和田誠×古川タク アニメーション上映会


 国書刊行会より6月末に刊行される手塚治虫の名作「フィルムは生きている」。それを記念して同書の装幀を手掛けたイラストレーターの和田誠と解説を執筆したアニメーション作家の古川タクが、自作アニメーションを持ち寄って上映、トークを繰り広げるスペシャル・イベント。ここでしか観られない貴重な作品の上映をはじめ、手塚漫画や国内外のアニメーション映画の話まで、何が飛び出すかは当日来てのお楽しみ。*当日は本イベントのために和田、古川の両氏による描き下ろしオリジナル・ポストカードをプレゼント。

[日時]2014年6月28日(土)15:00〜16:30(14:30開場) [参加費]1,500円(当日精算) [予約制]メール info@espacebiblio.superstudio.co.jp または電話(Tel.03-6821-5703)にて受付。 ●メール受付:件名「6/28 和田氏×古川氏トーク希望」にてお名前・電話番号・参加人数をお知らせ下さい。おって返信メールで予約完了をお知らせいたします。 ●電話受付:03-6821-5703(月→金11:30→21:00/土11:30→20:00) ●定員 : 70名 [会 場]ESPACE BIBLIO(エスパス・ビブリオ)地図→ http://goo.gl/maps/uIPqv/

2014年3月14日(金)

ヒトコト劇場 #39
[桜井順×古川タク]








連載コラム【気まぐれ園芸の愉しみ】
梅の花はにおわない?

 真冬日のある朝、体を丸めて町を歩いていると、冷たい風に乗って可憐な香りが鼻をくすぐった。きょろきょろと見回しても、なかなか出どころが見当たらない。
 ビルの角を回り込むと、隣の民家の塀の上からツンツンと、白梅の枝が顔を見せている。こんなところに梅の木があったとは。毎日のように通り過ぎているのに、全く気づかなかった。一日の始まりにこんな発見があると、「幸先がいいかも」と気分も上がる。
 梅は、一年の最初に「花の香り」を届けてくれる植物の一つだ。甘酸っぱくしっとりとした香りを不快に思う人はいないのではないだろうか。この香りをかぐと、「まだまだ先」と思っていた春の訪れを突然予告された気分になり、寒さで固まっていた体も自然とほ

ぐれる。おそるべき梅の香り効果、である。
 梅干しはもちろん、こんぶ梅や「小梅ちゃん」など、梅ならなんでもウェルカムな私にとっては、梅の木はぜひ育てたい植物だが、樹木を植えるスペースはない。仕方がないので、毎年、公園や近隣の庭先に咲く花を眺めるのにとどめている。
 スーッとのびた枝に点々

と花をつける白梅や紅梅には、満開の桜のような華麗さや迫力はないが、凛とした佇まいがある。そして、厳かな美しさを際立たせているのが芳醇な香りだと思う。
 本格的な春が訪れると、さまざまな花が一気に咲くが、あまり花の香りを感じにくくなる。これは、湿気を含んだ重たい空気のせい

で香りが広がりにくいため。
 真冬の澄みきった空気は、梅の香りをさりげなく鼻先に漂わせるのにちょうどいい塩梅なのだろう。もしかすると、香りの強い百合などと並べたら、梅の香りなど、本当はかすんでしまうほど弱いのかもしれない。けれども、あまりにも花の香りがプンプンと強くにおうと、花の魅力を損なうように思うのだ。
 私にとって「香り」は、ふんわりと漂って鼻先を通り過ぎるもの。一方「におい」は、こちらの意志とは関係なく「臭気の塊」となって人の鼻の穴をこじ開け、粘膜にこびりつくもの。
それは、いわゆる「悪臭」に限らない。本来なら不快に感じないはずのよい香りだって、強すぎれば香害になる。香水をつけすぎた人が「においの爆弾」と化すのが典型だ。

 その点、梅は「におう」ことがない。爽やかだけれど慎ましく、もっと嗅いでいたいのに、風向きが変わるとあっという間に逃げてしまう。つかみどころがないだけに、香り出会ったときのうれしさも格別なのだろう。
 ちなみに、梅と同時期に咲く水仙も、慎ましやかな甘い香りが魅力の花。この

二つの花の競演が見られるのが、鎌倉・瑞泉寺だ。
 境内は、上を見上げれば梅の花の雨、足もとに目を落とせば、水仙の花々のさざ波。それでも花の香りは、決して「におって」こなかった。二十年も前に訪れたのに、いまだに忘れられない。今も芳しい香りを漂わせているのだろうか。
(髙瀬文子=編集者)




「ジャジック・イン・クラシック」ミシェル・ルグラン feat. カトリーヌ・ミシェル
 
 ミシェル・ルグランの最新作がリリースされた。タイトルは「ジャジック・イン・クラシック」。ジャズのスタンダード曲をオーケストラ・アレンジによるクラシック演奏で表現した作品だ。
 今回はハープ奏者のカトリーヌ・ミシェルをソロ・プレイヤーとしてフィーチ

ャーしている。日本盤のプロデュースは、ルグラン氏曰く「長年の友人で、情熱家の中の情熱家である」本誌編集長。解説によると、このプロジェクトはもともと「ルグラン・ジャズ2」と呼ばれていたそうだ。「ルグラン・ジャズ」といえば、1958年、ルグランがニューヨークで、マイ

ルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーン、ビル・エヴァンスなど、当時のトップ・ジャズ・ミュージシャンたちと共演した名盤。このアルバムを制作する際、ルグランが出した第一の条件が「マイルス・デイヴィスとの共演」というのはよく知られた話。
 結局「ルグラン・ジャズ」でのマイルス・デイヴィスとの共演は4曲だったが、50年以上を経たセカンド・プロジェクトでは、まるまる1枚、カトリーヌのハープと共演する形になった。
 アルバムで取り上げているのは、「ラウンド・ミッドナイト」「ネイマ」「セントルイス・ブルース」など、どれもジャズ・スタンダードとして知られている有名曲ばかり。特にアルバムを通した「緩急」の流れが素晴らしく、オープニングのバロック調に展開する

「ジャンゴ」から、ハープという楽器の音の特性を最大限に生かした「キャラバン」まで、まるで「ハープとオーケストラのためのジャズ的(ジャジック)協奏曲」を聴くようにアルバム全体を一つの作品として楽しむことが出来る。
 ルグランのオーケストラ・アレンジは、「ジャンゴ」ではMJQのピアニストのジョン・ルイスへ、「ザ・マイ・アイ・ラブ」ではガーシュウィンの作品へのオマージュをというように、作曲者への愛情を忘れない。もちろん今回のアルバムのもう一人の主役でもある最高のハーピスト、カトリーヌへの愛情も。
 愛情ついでにもう一つ。アルバム・ジャケットについて。「ルグラン・ジャズ」はこれまでに数種類のジャケットでリリースされているが、アメリカ&ドイツ、

フィリップス盤(830-074-2)は、サングラスをかけた26歳の若きルグランが両手で指揮をする隣で煙草を持ちながら目を閉じて音楽を聴くマイルス・デイヴィスの写真が使われている。今回の「ジャジック・イン・クラシック」では、同じポーズで指揮をする現在のルグランの横に、うっすらとハープが映った写真が使われている。
 尚、日本盤はボーナス・トラックとして、「ブライアンズ・ソング」と「貴方が二人の間で」の2曲が収録されており、いずれもルグランとカトリーヌの2人のみの演奏で、日本で初めて発売される音源である。
(土屋光弘=ラジオ番組制作者)
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●「ジャジック・イン・クラシック」ソニーミュージックより発売中



サザエさん音楽大全ピアノ曲集

気分は日曜日、18時30分!
誰もが知っている、あのメロディーやこのメロディー♪

話題のCD「サザエさん音楽大全」のマッチング・ピアノ曲集が遂に登場!
効果音やカラオケを除く、全48曲収載!
全てオリジナル音源と同じフルサイズのピアノ・アレンジ譜です。
歌詞、コードネーム、演奏アドバイス付き。(初級~中級)
一家に一冊、弾けば笑顔になれる、全世代対応のピアノ曲集です(霞 朋郎:ピアノ編曲)。
発行:全音楽譜出版社 定価1,500円+税

2013年9月27日(金)

ヒトコト劇場 #29
[桜井順×古川タク]










秋の夜にはクラシック・ギターを

 クラシック・ギターの音色が好きだ。シンプルなデザイン、19個のフレットと音を出すための弦が6本。これだけの構造で、メロディー楽器にもなり、リズム楽器にもなり、伴奏楽器にもなる。またオーケストラ曲を演奏することもできる。スペインの作曲家、フェルナンド・ソルの作品「グラン・ソロ」を聴いたベートーベンが「まるで小さなオーケストラのようだ」と言った話があるとか、ないとか。とにかくそれ程、クラ

シック・ギターは多くの音色に富んだ楽器と言える。
 武満徹も、初期からクラシック・ギターの音色を愛した作曲家の一人だ。1977年には、荘村清志のレコード「12の歌・地球は歌っている」(装丁は和田誠)のために「ギターのための12の歌」を編曲、「ミッシェル」「ヘイ・ジュード」「イエスタデイ」「ヒア・ゼア・アンド・エヴリホエア」といったビートルズ・ナンバーから「ロンドンデリーの歌」、「虹のむこうに」「サマータイム」など、12曲のポピュラー・ソングを取り上げている。ちなみ

に12番目の曲は「インターナショナル」。武満は、この作品を書くにあたって、ギターという楽器について、「機能の点でかなりの不自由な面を持っています。しかし、そのために反ってこの楽器は作曲者(あるいは編曲者)に、特殊な愛着と好奇心を喚ぶのでしょう」と語っている。
 実際ギター曲を書く作曲者の多くは自らがギタリストである場合が多い。それは武満が語るようにギターという楽器が「小さなオーケストラ」と言われながらも「機能の点でかなりの不自由な面を持っている」ためだ。現在、日本の作曲家で武満の精神を受け継ぎ、「ギター作品集」を発表しているのが吉松隆だ。吉松は1983年4月から1年間、雑誌「現代ギター」でエッセイと共に毎月書下ろしのギター小品を連載する

という冒険的な企画を行なった。福田進一は、そこで生まれた作品を中心に、山下和仁のために書いた作品とアルバムのための新作を加えた吉松隆のギター作品集「優しき玩具」を1997年に発表。ジャズ風、現代音楽風、ルネサンス風から、テクノポップ(?)風まで、吉松いわく「おもちゃ箱をひっくり返したような」何でもありの楽しいギター作品集になっている。
 せっかくなので、日本人作曲家のギター作品を取り上げたCDをもう一枚紹介しておこう。大萩康司の「島へ」(2004年)。

武満徹の「ヒロシマという名の少年」「翼」「すべては薄明の中で」「島へ」の他、ジョン・ウィリアムスで愛奏で知られる藤井幸弘の「〝さくら〟による主題と変奏」、1993年に出版されて以来多くのギタリストたちに演奏されている藤井啓吾の「羽衣伝説~山入端博の旋律に基づく~」、ジャズ・ギタリスト渡辺香津美の難解な現代曲「アストラル・フレイクス」を取り上げている。大萩らしい繊細にして力強い、とても素晴らしい演奏だ。

(土屋光弘=ラジオ番組制作者)



一目惚れした音楽に再び出会うためのいくつかの方法
iPhoneとYouTubeでこんなイイ曲探し

  年がら年中大好きな音楽に囲まれていても、未知の音楽への飽くなき欲望といいますか、街で、ラジオでイイ曲に出会い「あっ」と声を上げることが多々あります。僕がレコード屋さんに行くのは、そんな「あっ」となった曲に再び出会えることを期待しているところが大いにあるのですが、「むむっ、このカヴァーは誰だろう?」「おい、これ昔CMで聴いたことあるぞ」「ん? ○○の新曲か? やるじゃん」という具合に知れば知るほど〝イイ曲アンテナ〟の感度が高くなって

しまうのは音楽好きの性(さが)。その分だけ「気になるけど知らない曲」が増えてしまい困っていました。しかしこの数年で状況は大きく改善、ひとえにスマホーー僕の場合はiPhoneのおかげです。
  例えばラジオで「あっ」となった場合、最近はFM雑誌に代わって局のHPでプレイリストがリアルタイムで更新されるのが当たり前になり、アクセスして聴いた時刻と照らし合わせればすぐにわかります。曲名と歌手さえわかれば、あとは家に帰ってユーチューブ

で検索するだけ。たいていの曲はファン、もしくは歌手本人によってアップロードされています。
  さて、問題は街中やお店で「あっ」となったときです。今までは歌詞の一部をどうにか聴き取り、そのフレーズでウェブ検索するという方法を取っていましたが、非英語圏の曲となると完全にお手上げです。そんなときに大活躍するのはiPhoneアプリの「SHAZAM」――音が鳴っている方向にiPhoneのマイクを傾ければ、誰が何を歌っているのか教えてくれるアプリです(アンドロイドOSでも使えるそうです)。有線やお店のCDの場合はDJが曲紹介をしてくれることはないのでこれが大活躍。最初はただのおもちゃだとバカにしていたのですが、バージョンアップを重ねるごとに精度が上

がっていき、「どうせ有名な曲しか知らないんでしょ?」と疑う僕を度々驚かせるようになりました。ヒットする確率はおよそ7割強といったところで、iTunesストアに登録されていない歌手や最新の邦楽以外に弱かったりなど、至らないところもありますが、これで日々の「あっ」はだいぶ解消されました。そうそう、DVDで映画を観ているといつも気になる挿入歌にも有効なので、エンド・クレジットの細かい文字を読まずに済むようにもなります。SHAZAMが拾ってくれた情報に曲の印象を一言添えて、メモ代わりのツイッターでつぶやき、そしてまた帰宅後にユーチューブのお世話になる……という寸法です。
  ユーチューブと言えば、サイトが自動的にオススメしてくれる関連動画をひた

すら辿り続けて理想の曲に出会うのを待つ、というのも手です。これはもう最終手段、というより末期的な症状だと言えそうですが、普通に過ごしていたらまず出会わないような音楽とぶつかることが多々あり、これもまたレコード収集とはまた違う僕の楽しみになりつつあります。具体例を挙げるとチェコの60年代アイドルとか、「ザ・ヒットパレード」そっくりのイタリアの歌番組とか。どこを調べても誰も書いていない、出演者も歌手も誰ひとり知らない、そもそもなにを話し歌っているのかもわからない、でも聴こえてくる音楽は自分好みという不思議な感覚がたまりません。
 もし日々の「あっ」で困っている人がいたら、これを利用しない手はないですよ!
(真鍋新一=編集者見習い)
 Shazam 開発: Shazam Entertainment Ltd. iTunes Storeにて無料で販売中(広告のない有料版もあり)



2013年7月19日(金)

イカロスと月に行ったレコード

 「月に行ったレコードがある」。今日はそんなちょっと夢のあるお話を。
 ポール・ウィンターというサックス奏者をご存知だろうか。1939年生まれ、シカゴのノースウェスタン大学在学中に、自らのセクステットを結成してインタ

ーカレッジ・ジャズ・フェスティバルで優勝、62年米合衆国国務省派遣の文化大使に任命され世界各地で演奏、ホワイトハウスにも招かれ、ホワイトハウスで正式に演奏した最初のジャズ・グループとなった。演奏旅行中に訪れた南米で大き

な影響を受け、独自のワールド・ミュージック路線を確立、70年代後半から80年代にかけて、自ら設立したレーベル「リヴィング・ミュージック」を中心に、ヒーリング&ニューエイジ・ミュージックの旗手として活躍した。鯨の鳴き声にあわせてサックスを吹いた「ホエールズ・アライヴ」(87年)、グランド・キャニオンの渓谷で、自然エコー効果の限界に挑戦した「キャニオン」(85年)など、当時は音楽ファンよりも、ニューサイエンス好きの人たちに好まれていたような印象が強い。そんなポール・ウィンターが、自らのコンセプトを最初に実現させたグループが「ウィンター・コンソート」だ。69年A&Mレコードから「ザ・ロード」をリリース、このアルバムはフィル・ラモーンのプロデュースで、全

米各地で行われたライヴを収録、ジャズ、ロック、クラシック、エスニック、現代音楽など、あらゆるジャンルをミックスさせた次世代の音楽の金字塔として高い評価を得た。そして、このアルバムのもう一つの金字塔が、「月に行った最初のレコード」となった事。「ザ・ロード」は、71年7月に打ち上げられたアポロ15号の宇宙飛行士によって月に運ばれ、アルバム収録曲の「イカロス」と「ゴーストビーズ」が、ミッションで新たに発見された2つのクレーターに命名された。特に「イカロス」は、当時メンバーだったギタリスト、ラルフ・タウナーの代表作で、彼の弾く12弦ギターの響きとデヴィッド・ダーリングのチェロのメロディーがとても美しく、ドリーミーで幻想的なムードを醸し出している。ちなみにアポ

ロ15号は、NASAの9番目の有人飛行ミッション、4番目の月着陸ミッションとして計画、これまでのアポロ計画と違い、科学調査を重視、3回の船外活動で、合計18時間以上にわたり月面を調査、「月の海」以外の場所に着陸した初めてのミッションだった。月面で実際にレコードを聴けたとは思えないので、実際にはカセットか何かに録音された音源を持っていたのではないかと思われるが、宇宙飛行士たちが月面の風景を眺めながら「イカロス」のメロディを口ずさんだかと思うと、なんだかうれしい気持ちになってくる。ただこの「ザ・ロード」は現在国内外共に廃盤。CD化も90年に一度されただけで、現在は入手困難な作品となっている。なんとも残念だ。
(土屋光弘=ラジオ番組制作者)



思いがけず出会ってしまった昔ながらのかき氷

 中古レコードを扱うぼくの店の常連客にガレージ・ロック・マニアがいる。彼はリンク・レイ、ウェイラーズなどフランティックなインストのギター・ミュージックを好み、60年代前半の希少な7インチ・シングルを収集している。
 激しい音楽嗜好とは裏腹に、彼の性格は温厚で物腰が実にやわらかい。話を聞いてみると、彼は今どき珍しくインターネットを全くやらない。レコード以外では欲張らず、持っているも

のを大事に使い続けるシンプルな生活を送っているという。もっとも意外だったのは、休日に奥さんが切り盛りするかき氷屋を手伝っていることだ。かき氷の専門店? うまくイメージできなかったので百聞は一見にしかずと出かけてみた。
 JR中央線の国立駅を北口に降り、駅前通りの2つ目の交差点を恋ヶ窪方面へ右折。国分寺崖線の左曲がりの急な坂を登りきると左手に「氷」の旗が見えてくる。ここは自宅農家の採れ

たて野菜の販売と喫茶のお店「モロゴロ」なのだが、かき氷屋はその店先を土日だけ借りて営業している。
 出迎えてくれた彼と挨拶を交わし、店先を覗くと古くゴッツいかき氷機に目を奪われた。店内に入ると奥さんがメニューを見せてくれた。一般的にかき氷はメロンやイチゴ、練乳のシロップが多いが、この店ではシロップを「みつ」と呼び、白いんげん、りんご、ココナッツ、キウイ、甘酒というめずしいラインナップ。それらは全て手作りだという。ぼくは生姜にチャレンジした。
 彼が氷を削っている間、かき氷機について訊ねてみるとフクロクというメーカーの昭和40年代頃の電動氷削機だという。彼はこれを古道具屋で見つけて一目ぼれしてしまい、かき氷作りに目覚めたのだそうだ。

 でき上がったかき氷はとても細かくフワフワとやわらかい食感で、普通のガリガリしたかき氷とは全く異なる。この上品な舌触りはきっと昔ながらのものなのだろう。その氷に生姜と黒蜜を煮詰めたみつと細切り

の生姜がドサっと乗っている。ぼくは大の甘党だから練乳も加えてもらった。生姜の辛さがテンション・ノートになった絶妙のハーモニー。はじめての味だった。
 みつ作り担当の奥さんがもっともこわだっている素

材が「花見糖」という国産さとうきびの原料糖を100%使用した砂糖だという。みつの素朴な味はこの砂糖によるものだろう。
 かき氷屋は店先を借りているので屋号の看板がないが「100%かき氷」という店名がある。もしかしたら「花見糖」へのこわだりからこんな店名をつけたのだろうか? 
 かき氷を食べた後、モロゴロのメニューからコーヒーと天然酵母のパンを注文した。天然木のインテリアの落ち着いた雰囲気の店内で、ゆったりした時間を過ごすことができた。
 ガレージ・ロックのドロドロした雰囲気とは無縁の爽やかなお店で食べた、今までのイメージが変わるのんびりしたかき氷。次は白いんげんにトライしよう。
(古田直=ダックスープ店主)



「ミュージックジャケットギャラリー2013」を楽しむためのアイドルレコードジャケット考

 1980年夏、都内辺境の町内は1枚のアイドルのレコードの評判で持ちきりであった。「5丁目のFくんが松田聖子のLPレコード『スコール』を買ったらしい」「2年A組のFくんの家に『スコール』があるらしい」「AくんがFくんから『スコール』を借りたらしい」等々。たった1枚

アイドルのLPレコードを買っただけで、Fくんは渦中の人物となってしまった。当時の中学生のお小遣いは3000円程度、その中から2500円のLPレコードを購入することはかなりの出費で、相当の覚悟のうえに購入を決意したことに違いなく、そこに80年代前半当時のLPレコードの希

少性をうかがいしることができるが、この話の肝はそのレコードが松田聖子の『スコール』であった点にある。たとえば、その頃人気の松山千春やアバやサザンオールスターズのLPレコードを買っていたクラスメイトもいたが、彼らはとくに話題には上らなかった。しかし、この年の松田聖子の登場は市井の人間が皮膚感覚で新しい時代の到来を予感し、無意識にその活躍に期待していた。だからこそ、たった1枚のレコードがここまでの話題を提供したといえる。しかもそのレコードのジャケットはピンク地を背景にした当時18歳の松田聖子の濡れた髪の毛と物憂げな表情がとても印象的で、中学生にとっては不純な妄想をかき立てるに十分のデザインであった。ビジュアル的なインパクトも申し分ないLPレコード

を普段は大人しいFくんが購入したという意外性もニュースを加速させ、その評判は校内から町内へと飛び火していった。そして、自分も無性に「スコール」が欲しくなり、1年後にレコードを手にすることに。今でも『スコール』を見るとふと当時の一大事件が思い出されるし、改めて80年代の松田聖子のレコードジャケットには一種独特な色気があることに気付かされる。
 同じようなことを人気ドラマ「あまちゃん」を見ていても思う。ところどころにフィーチャーされた80年代アイドルへのオマージュが連日のドラマを盛り上げているなか、とくに印象的なのは、主人公アキの母親春子の実家部屋に所狭しと置かれたアイドルのポスターやレコードである。細かいこだわりを感じさせる多くの小道具が40代視聴者の

目を刺激する。もちろん、松田聖子のポスターやレコードジャケットは、いちばん目立つところに貼ってある。当時、自分の周りにも透明下敷きにアイドルのシングルレコードのジャケットを入れ、自宅部屋には天井にまでアイドルのポスターやレコードジャケットを貼っていた友人が多く存在したが、あのセンスはいったい何だったのだろう。そう考えてもやはり、アイドルとレコードジャケットは、他ジャンルの音楽にはない密接な結びつきがあり、とくに80年代に青春時代を過ごした者にとってのそれはアイデンティティーを構成するうえでたいへん重要なアイテムであった。
 そんなことを再確認する展示イベント『ミュージックジャケットギャラリー2013』が7月18日から東京・新宿髙島屋とタワーレ

コード渋谷店で行われる。70年代前半の南沙織、岡崎友紀、山口百恵から80年代の松田聖子や小泉今日子、90年代の安室奈美恵やモーニング娘。、そして現在のAKB48、ももいろクローバーZまで連綿と続く日本の女性アイドル」の歴史を、500枚以上のレコードジャケットで振り返るという大掛かりな催し。過去に女性アイドルだけのレコードジャケットを大量に展示したイベントは例がなく、その絵を想像しただけで壮

観である。時代時代のヴィジュアルセンスや女性アイドルのルックスやヘアスタイル、ファッションセンスの変化、あるいはレコード会社によって異なるデザインなど、様々な切り口で楽しめるに違いない。ほかにも、お宝アイテムの展示やアイドル本人が生出演しての特別トークイベントも行なわれるという。きっと、会場を一回りしたあとには前述の「スコール」話のように、各人それぞれのジャケットにまつわる貴重なエ

ピソードが思い起こすのではないだろうか。そんな話を肴に旧友と酒を酌み交わすのも一興。そして、昔を思い出して、自分の部屋にアイドルのレコードジャケットを飾りたくなることだろう。自分も実家に帰り、開かずのレコードラックから埃だらけの「スコール」を探し出すに違いない。
(竹部吉晃=ライター/編集者)
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●ミュージックジャケットギャラリー2013<日本の女性アイドル> 40年余りの日本の女性アイドル変遷を振り返るべく、シングル盤ジャケット500枚以上を現物展示。
※スペシャルトークイベント ●7月21日(日)午後4時〜新宿会場/ゲスト=中川翔子 ●7月28日(日)午後4時〜渋谷会場/ゲスト=ニャンギラス
MUSIC JACKET GALLERY 2013 ●東京/新宿会場=新宿髙島屋1階JR口特設会場/7月18日(木)~23日(火) 10:00~20:00 ※最終日は19:00終了 ●東京/渋谷会場=タワーレコード渋谷店8階SpaceHACHIKAI/7月25日(木)~28日(日) 11:00~21:00 ●MUSIC JACKET GALLERY公式HPは http://www.epa-mjg.com



小林準治氏サイン会 

松本まるごと博物館連携企画展『北杜夫と松本』
記念講演会「どくとるマンボウ家の素顔~ユーモアを大切にイキイキ生きる~」
講師:斎藤由香氏(北杜夫長女・エッセイスト)
日時:7月21日(日)13:30~
会場:あがたの森文化会館2-8教室(国重文・旧松本高校本館内)
定員:80名(申し込み先着順)
受講料:300円
申込み:午前9時から電話で 旧制高等学校記念館へ(TEL.0263-35-6226)

サイン会は、斎藤由香さんの講演会の後に行われます。
この講演会に参加するためには、電話予約と300円の受講料が必要です。

なお、本書についての詳細は次週の「週刊てりとりぃ」で紹介予定。


村井邦彦
音楽劇『アルセーヌ・ルパン カリオストロ伯爵夫人』
オリジナルサウンドトラック
 

劇団スタジオライフによる音楽劇『アルセーヌ・ルパン カリオストロ伯爵夫人』のために村井邦彦が書き下ろした楽曲を収録したオリジナル・サウンドトラック。
VMCD-0005 ¥2500/7月4日より、会場のみ限定発売

スタジオライフ『音楽劇 アルセーヌ・ルパン カリオストロ伯爵夫人』

2013年7月4日(木)~21日(日)@シアターサンモール ・料金=全席指定 前売5,500円/当日5,800円、学生3,000円(当日のみ、要学生証)
【スタッフ】原作=モーリス・ルブラン 脚本・演出=倉田淳 作曲=村井邦彦 美術=宇野亞喜良
【キャスト】松本慎也、岩崎大/関戸博一、青木隆敏/tekkan ほか
*Toi(トワ)チーム、Et(エ)チーム、Moi(モワ)チームの一部トリプルキャスト


2012年度「集めたくなる栞」人気ナンバー1
宇野亜喜良 12カ月分額装セット 限定生産販売 

ブックユニオンにて新刊本をお買上げいただかないと手に入れられなかった宇野亜喜良さんの栞を、1年12カ月分額装いたしました。フレーム・台紙の色も宇野さんに選んでいただき、直筆でサインもいただきます。

こちらは店頭・お電話・Webで、ご注文いただいた分のみ生産する限定販売となります。ご注文は下記リンクより。

定価:12,600円(税込) 締切:2013年7月末
http://diskunion.net/book/ct/detail/MBK-20130621001